原油価格の下落が引き起こす未曾有の事態

中東で地政学リスクが飛躍的に高まる懸念

2018.07.20(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53588
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 世界第3位の原油消費国となったインド経済も原油高のせいで原油需要が減少し始めている(7月11日付OILPRICE)。原油価格の高騰により多くの米ドルが必要となった石油会社のせいでインドの通貨ルピーが下落し、これにより原油輸入コストがさらにアップするという悪循環が生じており、急速なインフレの進行はインド経済全体の懸念材料になりつつある。

 世界の1次エネルギー需要に占める原油の割合を見ても、2000年の4割弱から2020年に3割強まで下がるとされており(英BP予測)、原油需要の低迷は長期にわたって原油価格への下押し圧力になる。

ホルムズ海峡封鎖を匂わせるイラン

 筆者は原油需要の減少から原油価格は年末にかけて1バレル=50ドル前後まで低下し、これにより中東地域で地政学リスクが飛躍的に高まるのではないかと懸念している。

 まず、イランである。イラン革命防衛隊高官は7月10日、「イラン産原油が禁輸となれば、我々は原油を運ぶ船舶がホルムズ海峡を通過することを許さない」と発言した。

「米国の制裁によるイラン産原油の減少を補填しろ」という米国の要請を受け、サウジアラビアなどは増産態勢に入っているが、イランが「自国の犠牲によって他の産油国が経済的恩恵に浴するのはなんとしてでも阻止したい」と思うのは当然である。原油輸出量の減少に原油価格の下落が加われば、イランの「堪忍袋の緒」が切れてしまうかもしれない。

 ペルシャ湾とアラビア海を結ぶホルムズ海峡を通過する中東産原油量は、世界の原油消費量の2割に相当する。ホルムズ海峡の一部はオマーンの領海であるため、イランが同海峡を一方的に封鎖することはできないが、イランのイスラム革命防衛隊の海軍の同海域でのプレゼンスは高い。イランはホルムズ海峡を封鎖したことはないが、欧米の経済制裁に反発したアハマディネジャド前政権が海峡の封鎖を警告したことがある。その後、革命防衛隊はペルシャ湾地域で米国と対決するため巡航ミサイル、弾道ミサイル、無人機、機雷などの軍備を増強し、巡航ミサイルや弾道ミサイルの演習を毎年実施している。バーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊は「ホルムズ海峡の通行の自由と航行の自由を確保する準備はできている」としているが、革命防衛隊が機雷を配備した場合、ホルムズ海峡の再開には長期の時間が必要となりそうだ(7月11日付ロイター)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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