中国経済の急減速を織り込んでいない原油市場

貿易紛争による中国経済ハードランデイングの懸念

2018.07.06(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53487
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 米国では夏のドライブシーズンを迎えガソリン価格の上昇懸念が高まっている状況下で、イランの原油生産減により原油価格が上昇すればガソリン価格は高騰する懸念がある。秋の中間選挙を有利に戦いたいトランプ大統領は「イランへの猛烈な制裁」と「ガソリン価格の安定」を得たいところだが、「二兎を追う者は一兎を得ず」になりかねない。

イランの原油生産量は減少するのか

 トランプ大統領が想定するイランの原油生産の大幅減少だが、足元の原油生産量は日量380万バレル超で堅調に推移している。

 2012年の経済制裁でイランの原油生産量は日量100万バレル減少したが、今回も大幅減産となるかどうかはイラン産原油の主要購入先である中国(2017年の輸入シェアは24%)が鍵を握る。中国は2012年の制裁時に米ドルに代わり人民元でイラン産原油の購入を続けたが、今回も米国の要請を拒否する姿勢を示している。

 中国は今年3月から上海市場で人民元建ての原油先物取引を開始し、3カ月が経過した時点の取引高は世界第3位の規模にまで拡大した。グレンコアやトラフィギュラなど外国の大手トレーディング会社が参加しているが、取引の主体は国内の個人投資家であることから、上海市場での取引価格は他の原油先物市場に連動しているだけで、「自国の需要動向を原油価格に反映させる」という中国政府の目的は実現していない。人民元の国際化にもつながっていないという冷ややかな見方もある。

 一方イランでは6月25日から対ドルで通貨リヤルが値下がりしたことを受けて首都テヘランや各都市で抗議活動が発生している。イラン国会前では「ハーメネイー指導者に死を」「政権によるシリア介入の停止」と呼びかけるデモ隊と治安部隊が衝突した。国民生活のさらなる悪化を防止するため、イラン政府は民間会社の原油輸出を許可する動きに出ている(7月2日付OILPRICE)。原油輸出をなんとしてでも維持したいイランが「上海原油先物を中東産油国のアジア向け輸出価格の価格指標にしたい」とする中国の意向に沿う形で協力すれば、同国の原油生産量は中国のおかげで前回ほど減少しないのではないだろうか。

 供給面に関しては、ロシアを抜いて世界第1位の原油産油国となろうとしている米国の動向も軽視できない。原油高が続く限り米国の原油生産量は増加し続ける可能性が高いからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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