中国経済の急減速を織り込んでいない原油市場

貿易紛争による中国経済ハードランデイングの懸念

2018.07.06(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53487
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 中国の6月の製造業PMIは、米中の貿易摩擦激化により輸出が減速したことから市場の予想以上に低下した。人民元の6月の月間下落幅は3%を超え、人民元の切り下げがあった2015年8月の2.7%を上回ったが、人民元の下落が続けば中国政府が恐れるキャピタルフライトが再来する。国際金融市場では「中国はもはや安全な新興市場ではない」との声が高まっている。

 トランプ大統領は中国の対米貿易黒字額を1000億ドル減らすことを目指しているが、この額は中国の2017年の貿易黒字額の4分の1に相当する。債務急増に悩む中国経済にとっての生命線は海外からの巨額のマネー流入であるが、マネーの流入が大幅に減少すれば、資金繰りに窮した企業の大量倒産を招くことは必至である。米銀JPモルガンチェースは6月29日、「貿易戦争により中国企業のデフォルトが急増し、銀行危機が発生する可能性がある」と懸念を示している。

 中国経済のハードランディングの懸念が頭をもたげる中、6月25日に中国政府内部で驚愕の内容の論文が発表された(7月3日付現代ビジネスオンライン)。論文のタイトルは「金融恐慌の出現を警告する」である。その内容は「金融パニックが中国で起きる可能性は現時点で極めて高いと考えられる」というものだった。作成者は中国国務院傘下の中国社会科学院に2015年6月設立された「国家金融・発展実験室」のメンバーである。習近平政権の金融ブレーンが執筆した論文は政府内部で大反響を呼び、ネット上にも転載されたが、直ちに当局によって削除された。

「バブル崩壊は既に始まっている」と主張する中国の経済専門家も存在しており、好調さを維持している中国経済は今年後半に急減速に転じる可能性が高い。中国経済が急減速すれば世界の原油需要は減少に転じ、7月からの主要産油国の増産もあいまって原油市場は大幅な供給過剰となってしまう。そうなれば原油価格は大幅下落する(1バレル=50ドル以下)だろう。

 このように「足元の需給逼迫感に煽られて増産したら実は供給過剰となってしまった」というシナリオも念頭に置きながら、今後の原油価格の動向を注視していく必要があるのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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