中国経済の急減速を織り込んでいない原油市場

貿易紛争による中国経済ハードランデイングの懸念

2018.07.06(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53487
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 OPEC総会までは米国内の供給過剰を反映してWTIと北海ブレントの価格差が1バレル当たり10ドルまで広がり、これを追い風に米国産原油の輸出は大幅拡大した(直近の輸出量は日量300万バレル)。OPEC総会後はカナダのオイルサンドの操業停止(日量36万バレル)などによりWTIが上昇しブレントとの価格差は5ドル未満になったことから、米国の原油輸出量は今後減少する可能性が高い。これまでは原油輸出拡大により米国の原油在庫は大幅に減少しWTI価格を下支えしていたが、原油輸出が縮小すれば米国の原油在庫は再び増加に転じWTI価格に対する下押し圧力となる。

米中貿易戦争の悪影響が現実に

 続いて、需要面はどうか。「シェールオイルの主要生産地であるパーミアン鉱区で原油を運び出すパイプラインの輸送能力が今後数カ月で上限に達し、小規模な石油会社は減産か生産停止に追い込まれる」との憶測などから、原油先物市場におけるファンドの原油売り玉が過去最低水準になっている。市場関係者は原油価格が1バレル=50ドルから同70ドルに上昇しても需要の伸びは変わらないと想定しているが、その想定ははたして正しいのだろうか。

 原油高によるガソリン高で米国のガソリン需要はドライブシーズン入りしても一向に盛り上がる気配がない。インドや発展途上国でもガソリン高が庶民の家計を直撃する事態となっている。

 今や、世界の原油需要の伸びは世界最大の原油輸入国である中国にかかっていると言っても過言ではない。そうした状況のなか、米中貿易戦争の悪影響が現実のものになろうとしている。

 世界の2大経済大国である米国と中国は、7月6日共に相手国に対して340億ドル規模の関税を課すこととなったが、経済規模が米国の3分の2に過ぎない中国の方が劣勢である。原油高の影響も輸入依存度が高い中国の方がダメージが大きい。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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