米国にシェールガス革命があるなら、日本にはスーパー地熱発電革命がある。エネルギーの大半を輸入に頼っている日本にとって、電力の完全自給も夢ではない画期的な技術が開発されている。
従来使われていた地熱発電用の井戸よりももっと深い地層まで掘削してパイプを通し、そこに高い水圧の水を供給して高温の蒸気を得る「延性帯涵養地熱発電」と呼ばれる世界初の方法で、弘前大学の北日本新エネルギー研究所が中心になって考案した。
原発は不要、発電用の石油やLNGの輸入も大幅減
この方法は、これまでの地熱発電の欠点を解消できるだけでなく、非常に高温の蒸気を得られるため、発電効率が高くなり将来的には日本の総発電量の50%以上を賄うことも可能になるという。
本格的に実用化されれば、原子力発電所が不要になるだけでなく、火力発電用に輸入されている石油や天然ガスの量も大幅に下げられる可能性がある。
さらに素晴らしいのは、発電に使った後の温水を様々な用途に使えることである。
例えば、北国であれば道路や屋根の融雪、地域暖房として、また新たな源泉として温泉地を作ることも可能になる。
延性帯涵養地熱発電を研究している弘前大学の北日本新エネルギー研究所の村岡洋文所長は次のように話す。
「小型分散型の発電ができるのが大きな特徴の1つです。市町村がそれぞれ小型発電所を作って、電力だけでなく暖房や融雪用の温水も各家庭や企業に供給できるようになれば、北日本の生活が一変する可能性があります」
「毎冬、雪下ろしのために不幸にしてかなりの数の方が亡くなっています。そういう事故を減らすことができるし、エネルギーの自給自足ができて豊かな生活が実現すれば若い人たちが都会へ流出するのを防ぐきっかけにもなるでしょう」
もちろん、冬の厳しい地域だけにメリットがあるのではない。世界の活火山の8%が集中している日本では、北は北海道から南は沖縄まで、この地熱発電の恩恵を受けることができる。
延性帯と呼ばれる地層は、流体であるマグマのすぐ上にある層で、固体でありながら柔らかく流動している層のこと。