ある日本人ビジネスマンからこんな話を聞いた。「中国は景気が悪いというが、メディアが騒ぐほどウチの企業は悪くない。むしろ、底打ち感を感じている。下期以降は持ち直してくるだろう」
あまり明るい話を聞かない日本企業の中国ビジネスだが、一部の工作機械メーカーなどはそれなりの手応えを感じている。労働力不足の中国では工場の自動化が急ピッチで進められており、彼らにとっては「これからが稼ぎ時」のようである。
また、こんな声もある。
「(2012年9月の)反日デモ以降、弊社の現地法人のある市政府は、まめにケアしてくれるようになった」(江蘇省丹陽市の自動車部品メーカー)
「瀋陽市では反日デモ直後、副市長が日本の現地法人を訪問し、『何かあれば守りますから』とメッセージを残した」(瀋陽市の日系コンサルティング企業)
フットワークの鈍い中国の地方政府が、反日デモ以来、一転して面倒見が良くなったというわけである。心証悪化を必死で挽回しようとする地方政府のあわてぶりが見て取れる。
昨今は高齢者介護という新しいビジネスも動き出している。ハード、ソフトともに日本企業への期待は高い。
だがその一方で、ヤマダ電機が2013年5月末に南京市の店舗を閉鎖し、伊勢丹は6月に瀋陽市の店舗撤退を発表した。故・田中角栄氏の「手ぬぐい8億本」(日中国交正常化の際に発言した「中国国民全員が手ぬぐいを買えば8億本売れる」)ではないが、単に人口だけを見れば、中国は確かに巨大市場である。だが、中国国民の財布のヒモは想像以上に固い。手元の資金は貯蓄に回し、なかなか購買に結びつけることはない。13億人の巨大市場が幻想であることは、進出して初めて分かるのだ。
このように日本企業の中国ビジネス環境はまだら模様だ。「反日」や「景気減速」などの言葉で一括りにすることはできない。業種やターゲット、あるいは、進出する地域によって事情は様々だ。
それでも増える日本の対中投資
他方、世界が中国投資を減速させる中で、日本の投資額がなぜか増加するという不思議な現象が起きている。