フィリピンバブルが来る、そんな声も聞こえてくる。

 3月には英国大手格付け会社フィッチ・レーティングスが、そして5月には米国スタンダード・アンド・プアーズが初めて比国債を投資適格に格上げするなど、海外からの投資マネーが流入している。

 とにかく今この国は絶好調だ。2010年「汚職なければ貧困なし」をスローガンに掲げ当選したベニグノ・アキノ大統領の国民支持率は70%超。OFW(Overseas Filipino Workers)からの送金が順調で、GDPの約1割にあたる2兆円をこの海外出稼ぎ労働者からの送金が占める。

高度成長期の日本と重なるフィリピン、消費意欲も旺盛

 ここ最近の数多くの日本企業の進出を横目に、フィリピンに住んで15年、長らく日本企業のフィリピン進出支援をしてきた和橋総研の三宅信義社長は、「以前のフィリピンはダメトラと言われ続けた昔の阪神タイガースみたいなものでしたから」と、最近の好調ぶりに目を細める。

入出国カードに自分の写真、アキノ大統領あわてて回収命令

国連総会で演説するフィリピンのベニグノ・アキノ大統領〔AFPBB News

 確かにマルコス政権以降の腐敗した政治で経済成長も遅れ、外国からの投資も入ってこず「アジアの病人」とも呼ばれていた。

 位置的に日本にも近く、ASEANの入り口にあるにもかかわらず、日本企業は素通りをしてタイなど他のアジア諸国に行っていたことを考えると、そのような印象になるのであろうか。

 振り返ってみると、日本でもフィリピンに関する報道は、仮に良い話題があったとしても実際に放送されるのは貧困・内戦・殺害・そしてスモーキーマウンテン(マニラ市のスラム街)に住む人々の話題。

 結局はそういったニュースしか取り上げてもらえないとの嘆きを、三宅さんも当時のNHKマニラ支局長などからも聞いていたそうだ。

 そういった流れからも、「フィリピン=危険」というイメージは、日本の中でまだまだ拭えていない部分があるのは事実だろう。

 ところがここ最近を見ると連日紙面ではフィリピンの好調ぶりが記事となり、テレビでもオンライン英会話や語学留学の特集が組まれるなど大きく変わってきている。経済誌などでもアジアで最も人口ボーナスの恩恵を受ける国として特集されている。

 フィリピンの街を行く若い世代に溢れる消費意欲は目覚ましい。大型ショッピングモールに行くと分かるが、とにかく若い人だらけだ。そして、日本料理をはじめ多国籍のレストランが並ぶ中、当然フィリピン人も外国人に交じって料理を食べている。