先日、渋谷の映画館で『ALWAYS三丁目の夕日 '64』を見た。

 「舞台は昭和39年の東京。日本は戦後19年目にして復興を遂げ、オリンピックを開催した。高度経済成長の真っただ中、オリンピック開会式の日は航空自衛隊のブルーインパルスがアクロバット飛行をし、真っ青に晴れ上がった空に浮かぶ五輪の飛行機雲。日本人はすべてが良くなっていくことを確信していた」

日本の高度成長期のような活気がみなぎるホーチミン市内

マジェスティックホテル5階にあるレストランのオープンテラスから見たサイゴン川と高層ビル群(筆者撮影、以下同)

 今週はホーチミン市に滞在している。今、ホーチミン市はまさに昭和39年の東京のような雰囲気がみなぎっている。

 サイゴン川に程近いホテルの最上階から眺めると、川を行き来する小型運搬船と建設中の高層ビル群が見渡せる。

 街を歩けば、道路はバイクの渦の中。活気に溢れている。夕方になると、車・バイクの排ガスと土埃で街の雑踏がぼんやりオレンジ色に映る。

 都会の高層ビル群の片隅に残る民家の軒先には家族の団欒が垣間見える。ご近所同士が近い距離感で生活していて、泥臭い人間模様が繰り広げられている。日本人の原風景がそこにはある。

 ベトナムでは、明日はきっと今日よりも良くなると皆が信じている。まさに『ALWAYS三丁目の夕日’64』の時代背景だ。

 しかし、冷静にマクロ経済を見れば、政府・中央銀行による綱渡りの舵取りが求められている状態だ。ベトナムの庶民感覚にあるような、「超」が付くほどの楽観はできず、先行きは予断を許さない。

 「経常赤字、短期対外債務の引当が低水準であることに加え、インフレが高止まりしていることで、ほかの東南アジア諸国と比較してベトナム経済は世界の景気低迷の影響を受けやすい。

 これはHSBC(香港上海銀行)が示したもので、国内外で生じた大きな不均衡により、ベトナムの貿易と金融セクターは悪化しているという。HSBCは、ベトナムでは『インフレが無視できないほど高水準』にあるとし、金融政策には余裕がほとんどないと述べた」(ブルームバーグ、2011年12月20日)