先日、「クールジャパンは日本の成長力か?」というテーマの座談会に出席した。

 まずもって私は、クールジャパンが何かを知らなかった。ドイツでは聞かない。そこで事前に調べたところ、日本の創造的な産業やサービスが海外で高く評価されている現象のことだという。

 そして、その現象をさらに宣伝し、推進し、ビジネスにしましょうというのが、日本政府のクールジャパン戦略だそうだ。日本政府は2010年6月に経済産業省内にクールジャパン室を設置した。

世界の若者に日本語を学ばせる「アニメ、マンガ、ニンテンドー」

 では、具体的に何がクールジャパンかというと、アニメや漫画、コンピューターゲーム、芸能などのエンターテインメント、ファッションやキャラクター商品、食文化、伝統工芸などで、それにさらに宅配便、旅館など、日本独特のサービス文化が加わる。早い話、何でもよいようだ。

パリで「第13回ジャパン・エキスポ」開催

フランス・パリで毎年開かれている「ジャパン・エキスポ」に集まる若者(2012年7月7日撮影)〔AFPBB News

 確かに、アニメ、マンガ、ニンテンドーが、海外の若者にとってクールであるというのは、ドイツにいるとよく分かる。これら3つの言葉が、ドイツで検索される日本関連の言葉の最初の3つなのである。

 ドイツの大学では、専攻学科に関わらず、誰もが登録して受講できる語学講座があり、日本語学科が設置されているところでは、それが結構な人気だ。

 ところが、その日本語の受講者の動機のほとんどが、“アニメを原語で見たい”、あるいは、“漫画を原語で読みたい”というものだと聞いて、ビックリしてしまった。私のドイツの従妹の息子もそうだったというので、なぜ、わざわざ日本語で読まなければいけないのかと訊くと、彼はこう答えた。

 「日本の漫画は、基本的に大人向きであり、内容は高度で、緻密な心理描写なども多い。ところが、ドイツで漫画を許可する官庁は、漫画といえば子供の物だと思い込んでいるため、子供向けに修正を施す」

 「例を挙げれば、ある主人公はくわえ煙草がトレードマークであったが、ドイツではタバコは社会から追放されつつあり、特に子供向けの物には使えないということで、その主人公は、いつも棒付きキャンデーを嘗めている。マンガファンとしては遺憾の極みである。この調子では、他にもどれだけの改竄が行われているか分からないではないか」

 そこで漫画オタクは、「原語で読まなければ!」と奮起し、日本語の勉強という無謀な行動に突進するのだが、始めてみるとそれは意外と難しく、ひらがなも制覇できないまま、1カ月ほどで受講者の脱落が始まるそうだ。