今からできるだけ排出の少ない生産方法に切り替えていく、あるいは適切に森林管理を行っているプランテーションで栽培された原材料を購入するといった対応をとっていくことを始めたほうがよい。上場企業であれば、既に実践している日本企業も多い。

 排出量の少ない商品・サービスは、現在は販売価格が高かったとしても、将来もっと新しい顧客や市場を開拓できれば規模の経済性が働いて価格が低下することが期待できる。

 例えば、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーの発電コストは、当初は高額で政府の補助金が必要であった。自然条件や国による違いはあるが、現在では機器の製造費用の削減や生産技術の開発によって発電コストが大きく低下しており、補助金がなくても採算がとれる業者も増えている。

 気候変動リスクは企業にとって重大なリスクであるが、短期的な視点と長期の時間軸の両方で戦略を練ることが望ましい。気候変動リスクは今後もっと顕在化していくことが予想されているが、それがいつどのように顕在化していくのかを正確に予想するのが難しい。

 リスクの性質や大きさも変わりやすいため、定期的に物理的リスク、移行リスク、訴訟・責任リスクについて企業の財務に重大な影響を及ぼしうるものを洗い出す作業をするのがよい。

 リスク分析によって、現在のビジネスモデルの対応力や強靭性を確認することが、新しいソリューションとなるような商品開発、イノベーション、ビジネス機会を見出すきっかけになるかもしれない。

「環境とビジネス」は両立しうるものであり、環境対応に費用がかかるといった後ろ向きの発想をしていると、新しいビジネスの機会を見つけるチャンスを逃してしまうであろう。

<連載ラインアップ>
第1回 気候変動対策として、各国はなぜ温室効果ガス排出量「正味ゼロ」を目指すのか?
第2回 世界三大格付け会社が警告、気候変動への対応力が「企業の信用」に直結する理由とは?
■第3回 欠かせないのは短期・長期の視点、現代の企業経営に重大な影響を及ぼす3つの気候変動リスクとは?(本稿)
■第4回 企業はなぜ、「バリューチェーン全体」の温室効果ガス排出量に目を配る必要があるのか(9月27日公開)
■第5回 温室効果ガス排出削減の新たな指標「削減貢献量」に企業が注目する理由とは?(10月4日公開)
■第6回 企業の環境経営を促す「カーボンプライシング」、今から検討すべきビジネスモデルの変革とは?(10月11日公開)

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