DX企画・推進人材が身に付けるべき「顧客価値提供力」はどうすれば養成できるのか?  DXやデジタルビジネスの成功事例には、「顧客価値を高めるビジネスの仕掛け」がうまく使われている。本連載では、顧客価値を高める9の方法をテーマに、ビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説する。

 顧客価値を高める9の方法は以下の通り。

 今回も「7. 好きである、ブランド価値が高い、自分が参加できる」について掘り下げていこう。

 「好き」「ブランド価値が高い」「自分が参加できる」の3つは、顧客価値を高め、他社との差別化手段となることは、前回紹介した。今回も、これらの要素を使い、顧客ロイヤルティを高める方法について解説していく。

プロシューマーという「ビジネスの仕掛け」を知る

 消費者を顧客にし、ファンに育てることができる「ビジネスの仕掛け」と筆者が考えているのが、「コンテンツマーケティング」「ファンマーケティング」「プロシューマー」の3つである。このうち、①「コンテンツマーケティング」と②「ファンマーケティング」については前回までに説明した。

 今回は③プロシューマーである。

・「売れなくなった」ブロック玩具

 ブロック玩具を製造する国際的企業があった。

 昔から誰でも知っているブロック玩具で、ブロックを組み合わせ、いろいろなものを造形できたので、知育玩具として人気が高かった。

 しかし、価格が高かったので他の安価なブロック玩具を買う人が増え、売り上げが下がっていった。

 この状況に困った社長はどうしたら自社のブロック玩具の人気をかつてのように高くできるかを考えた。

 だが、良いアイデアが出なかったので、知人に考えてもらうことにした。

 聞いた人は2人。1人は玩具販売チェーン販売部長のAさん、もう1人は、このブロック玩具ファンのBさんだった。

 Aさんは「人気がなくなったのは、類似品より価格が高いからである。類似品との価格差を分析し、消費者インタビューを行い、競争力のある価格にすることが必要だ。価格を下げることこそ、人気復活につながる」と主張した。

 一方、Bさんは「人気がなくなったのは、類似品と差別化できていないからだ。顧客の声を聞き、顧客に商品企画や開発に参加してもらい、そこで作った新商品を使った感想などを広告に生かせばよい。顧客参加型にすることこそ、人気復活につながる」と主張した。

 社長が採用したのはBさんのアイデアだった。

 すると、このブロック玩具は子供だけでなく、大人のファンが多く増えた。お客は自分にぴったりなオリジナル商品が欲しかったのだ。

 以降、Bさんが考えた「商品開発に参加するお客」はプロシューマーと呼ばれ、顧客をファン化する方法として他の業界にも広がったという。

***