DX企画・推進人材が身に付けるべき「顧客価値提供力」はどうすれば養成できるのか? DXやデジタルビジネスの成功事例には、「顧客価値を高めるビジネスの仕掛け」がうまく使われている。本連載では、顧客価値を高める9の方法をテーマに、ビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説する。

 顧客価値を高める9の方法は以下の通り。

 今回のテーマは「6. 操作が簡単、行かなくてよい、納期や待ち時間が短い」である。

 顧客価値を高める手法としての「操作が簡単」とは、商品やサービスの選定や購入手続きが簡単で、面倒でないという意味である。

 また、「行かなくてよい」とは、商品やサービスの選定や購入に関して、自宅や職場、電車などでの移動中に行えることで、店舗などに行かなくて済むということだ。

 さらに、「納期や待ち時間が短い」とは購買する商品やサービスが届くまでの日数が短かったり、それらを探したり、購入する手続きの時間が短かったりすることである。

 この連載で説明している「価値=ベネフィット÷コスト」の式に従えば、これらはコスト(手間、移動、時間)を下げる効果がある。

 これは、銀行に昼休みにしか行けない会社員のケースで考えれば分かりやすい。

 昼休中にしか銀行に行けない会社員にとっては「行き来する時間、窓口担当者に説明する時間、書類を書く手間、待ち時間」がコストになり、顧客価値を下げる。それを解消するためお客はネット手続きやネット銀行を使おうと考えるようになる。

 これに似たことは多くの取引で起きている。お客の払うコストが多くなるとそれを減じるところに向かう。これが自然なお客の行動である。

 例えば、あなたは昨年購入した寝具のマットレスを売りたいと考えている。腰が痛くならないとの評判で購入したが合わなかった。買ったことを後悔したくなかったので、枕を変えたりしたが、半年を過ぎる頃には腰痛が悪化、使用を断念した。

 それなりの値段で買ったのに半年で捨てるにはもったいない。少しでもお金になればと思い、あなたはネットで「マットレス 売りたい」と検索する。すると多くの「買取サイト」が表示された。あなたは表示されたサイトを上から順に開いてみる。

 すると、店舗に行ったり電話をしたりしないと見積もりをしてくれないサイトと、メールやLINEでも見積もりをしてくれるサイトがあった。あなたは考え、メールやLINEでも良いところを5つ選び、簡単な入力後、写真をつけて見積もり依頼をした。

 1時間後、3つのサイトから買取金額の提示がきた。3つとも同じ金額だ。これが相場かと思い、どのサイトにしようか迷っていると、その1つから個別連絡があった。そこには「すぐに決めていただければ、さらに買取額10%アップ。1時間以内にお手続きください」と書いてある。

 あなたは、どのサイトに売るかという迷いが消え、10%アップの機会を逃さないためにすぐ手続きを開始する・・・。

 これが消費者からみた「操作が簡単、行かなくてよい、納期や待ち時間が短い」の事例である。