<DX企画・推進人材のための「顧客価値提供力養成講座」>
■第1回 データやデジタル技術よりさらに大切、DXの成功に最も欠かせないことは何か
DX企画・推進人材が身に付けるべき「顧客価値提供力」はどうすれば養成できるのか? DXやデジタルビジネスの成功事例には、「顧客価値を高めるビジネスの仕掛け」がうまく使われている。本連載では、顧客価値を高める9の方法をテーマに、ビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説する。
顧客価値を高める9の方法は以下の通り。
今回のテーマは 「1.価格が安い」である。一般に価格の高い、安いは商材(商品・サービス)購入の大きな決定要素になる。では、価格が高い、安いとはどういうことであろうか。単に価格が安いことが顧客価値になるのだろうか。どのような場合でも、どのような商材であっても安いことが価値になるのだろうか。
「価格が高い・安い」という意味を理解する
消費者としてのわれわれは、しばしば、「①品の割に(値段が)高い」「②この値段なら安い」「③値段も良いが品も良い」「④値段は安いが、それなりの品」など、品(商材)との関係性の中で価格を語る。つまり、商材のもたらす効果や利益(ベネフィット)との関係で価格の高低を評価しているわけだ。
例えば、①は商材ベネフィットと価格の関係に不満足のケースで、「商材ベネフィット<価格」の関係である。一方、②は商材ベネフィットと価格の関係において、ベネフィットが価格を上回っている「大きく満足、お得な良い買い物をした」という状況だろう。
③は商材ベネフィットと価格が「高いところで釣り合っている」満足な状況、④については価格は安いものの、商材ベネフィットもあまり高くない「商材ベネフィットと価格が低いところで釣り合っている」状態である。これは満足もしないが、不満でもないということになろう。
このように「価格が安い」とは、絶対的な価格水準として客観的に決まるものではなく、商材から得られるベネフィットの多さと価格の高低を比較して購買者の価値判断で主観的に決まる。つまり、「価格の安さ」はベネフィットと一緒に考えることが必要なのだ。これはビジネスをやってきた人にとっては当たり前と思うかもしれないが、顧客価値を考える上ではしっかり押さえておくべき基本理論だ。