外食産業にとって人手不足解消は喫緊の課題で、自動化・合理化への関心は高い。また、生産性の低さも多方面から指摘されている。外食産業の生産性向上のヒントはどこにあるのか、ロイヤルホスト株式会社代表取締役社長の佐々木徳久氏に聞いた。
創業の歴史をさかのぼるとセントラルキッチンシステム(集中調理方式)の採用など、いち早く品質の向上と合理化の両立に努めてきたロイヤルホストは、店舗運営において先進的な取り組みを進めている。その目的や得られている効果について、同社代表取締役社長の佐々木徳久氏が、セミナー講師としてHCJ2017に登場する。テーマは『美味しさと、おもてなしの向上には、厨房の生産性向上が不可欠』だ。
ファミリーレストランという業態は、モータリゼーションの勃興によって成長した。車に乗って家族で食事に出かけるというレジャーの受け皿となったのだ。1980年代、ロイヤルホストはそのレジャーを支えて拡大した。
質の高さを追求するため生産性を向上させる
90年代に入ると、ファミリーレストランの二分化が始まる。低価格を売りにしたチェーンが誕生し、客もシーンごとに店を使い分けるようになった。そして2000年代に入ると、幅広いメニューを揃えるファミリーレストランに対し、寿司のみ、焼き肉のみといった専門店型のレストランが台頭してくる。そういった変化を踏まえ、ロイヤルホストが“高品質”という原点を再び強く意識するようになったのは、2010年ごろのことだ。
代表取締役社長 佐々木徳久氏
「ロイヤルホストはこれまで、各店舗に調理人を配置し、ひと手間かけた家庭では味わえない料理とおもてなしサービスによってご支持いただいてきました。ですからそこを再び見つめ、ロイヤルグループのブランドの源泉であるロイヤルホストが、グループの質の高さのショウルームとなるよう、既存店の改装に力を入れてきました」と佐々木社長はいう。
その改装には、厨房の刷新も含まれる。調理人が手元の調理に集中できるよう、ROQ3と名付けた新厨房システムの導入を進めており、2017年には全店での導入が完了予定である。
効果はすでに表れており「すでに導入ずみの店舗では、料理の品質が安定し料理に対するクレームが減少しました」と佐々木氏は言う。
ロイヤルホストは、セントラルキッチンで下処理や調理したソースや具材を、各店舗で調理人が調理して仕上げ、提供することを旨としてきた。ROQ3では、温度と時間で管理できるオーブンやフライヤーでの調理などは機械に任せて効率化し、ステーキの焼き加減やフライパン調理など、人の手でなければできない調理に手をかけることができるようにオペレーションを改善した。
効率化すべきところを効率化すると、時間と気持ちに余裕が生まれ、本来、人にしかできない業務に時間を割けるようになる。現在は、重い食器を運ぶなど、人の手ではなくてもできることは何かを考え、手段や方法を検討している。
店舗の過剰な“頑張り”で無理をする時代は終わった
人がすべき仕事とは、前述の繊細な気配りが必要な調理のほか、教育、そして接客があると佐々木氏は言う。たとえば、これまでは紙を使い、手計算で行っていた仕事をITに肩代わりさせることができれば、数字とにらめっこするのに使っていた時間を、従業員や、お客さまとのコミュニケーションを深める時間にあてることができる。
さらに、勤務時間の短縮も期待できる。POQ3の3には、“来客数+3名” “勤務時間を3時間短縮する”という思いも込められている。
佐々木氏は、働き方の変化についてこう語る。
「外食のようなサービス産業は生産性が低いと言われますが、それは店長をはじめ従業員の『頑張り』を効かすことができてしまう仕事だからでもあります。たとえば『今日は店が忙しくて日中は発注などの作業ができなかったから、夜、残業して行おう』といった調整が簡単にできてしまいます。しかし、時代は変わりました。そういった働き方はもはや推奨できません。店舗はもちろん、我々の側も意識を変える必要があります」
“頑張り”という名の無理を排除することが、巡り巡って、ロイヤルホストが大事にしてきた“質”の担保と新しい価値の創造をもたらすのだ。
では、現場に頑張りを求めずにすむようするには、どのような施策をとるのか。そこでもITが鍵となる。
「機械化、IT化は手段です。こういった手段を用いて将来ありたいロイヤルホストの姿に近づいて行きたいと考えています」
機械化・IT化に当たっての具体的な取り組みや効果については、HCJ2017内のセミナー『外食・中食産業の生産性向上ステージ』で、2月21日に佐々木氏が詳しく話す予定となっている。事前登録の上、東3ホールの特設会場にぜひ足を運んで欲しい。聴講は無料だ。
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ホスピタリティと“フードサービス”の商談専門展示会
【HCJ2017 2/21(火)~ 2/24(金)】
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