プーチンが死んだら?

 ガレオッティ氏によると、西側の制裁にもかかわらず、表面上ロシア経済は上手くいっているように見える。しかし経済の40%が軍事費に回され、インフラ、住宅、暖房システム、研究開発は棚上げされている。プーチンは戦争継続のためロシアの未来を担保にしているのだ。

 トランプ氏が大統領に返り咲いた場合、数々の妄言にもかかわらず「来年1月までにウクライナが本当に前進する年になるとアピールできればトランプ氏は敗北ではなく勝利に結びつけたいと考えるだろう。ミス・ウクライナを駐米大使に任命するのが最善策だ」と冗談交じりに語った。

ちなみにこちらが、2023年11月エルサルバドルで開催されたミス・ユニバースに参加したミス・ウクライナのアンジェリーナ・ウサノバさん(写真:AP/アフロ)

 ヴラーニョとはロシア語で「私は嘘をついている。あなたは私が嘘をついていることを知っているが、とにかく私は嘘を言うつもりだ」という意味だ。誰もがプーチンの嘘に気づいている。ロシア国民の4分の1しかプーチンと戦争を支持しておらず、ほぼ同数が反対しているが、凶悪で残忍な警察国家の前に下を向く。

「プーチンが死んだら? スターリンが死んだ時と同じように明らかな後継者がいないため、不安は残る。しかし40代のエリートたちはより現実主義的な方向への方向転換を推し進め、自国で盗み、海外で使うことができた古き良き時代に戻るかもしれない」とガレオッティ氏はいう。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。

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