ちょっと引いた目で見たら、この例の場合も、世のベンチャー起業ブームに乗って、准教授A氏と教え子B君のようなビジネスの世界で経験が浅い人材が、ビジネスプランコンテストに参加してくれたおかげで、たった5500万円で発明αのような優れた技術シーズの55%のシェアを、起業前のいわば青田買いで握ったという構図でしかありません。

 しかし、今の日本のベンチャー業界においては、青田買いをしたC氏の行動はなぜかSNSで拡散され賞賛される行動だとして拡散するだけでなく、真っ当な大企業や時には国までC氏の活動を称賛し支援するようになっているのです。この事実は架空の話ではなく、日本のベンチャー業界の実際です。

 ここで、有名国立大学Xの立場も考えてみましょう。大学Xにとって、(3)のプランよりも、(1)や(2)のプランの方が金銭的なメリット(期待値)は考えるまでもなく圧倒的に大きいのにも関わらず、どの大学も(3)のプランを最優秀賞にするためのビジネスプランコンテストを開催しています。

 経済的合理性と発明αの実用化の確率を第一に考えれば、大学XはA氏に対し、C氏が主導するビジネスプランコンテストへの参加を促すより前に、発明αをより良い条件で事業化に協力してくれる大企業を探す活動をするほうが、ずっと理にかなっているはずです。しかし、そういった活動を積極的に行っている日本の大学を、私は見たことがありません。これも、大学に対する、C氏のような立場の人たちの長年の営業努力の賜物で、大学が合理的に理にかなう選択肢を選ばなくなっているのかもしれません。

 私が訴えるような「技術ごと、案件ごとに、ステークホルダーの幸せはどこにあるかをフラットに考えてプランを立てませんか?」という意見を言う人は時折見かけますが、日本の技術開発ベンチャー業界界隈でこういった意見が省みられることは、残念ながらあまりありません。

 なぜなら、私のような自分の事業構築に掛かりきりのような人間が、過去の経験から日々の仕事の片手間で何を言おうとも、C氏の立場のような、技術を安く青田買いをすることが生業である人たちが、(3)だけが優秀なビジネスモデルであると喧伝する営業活動に割く努力には、時間的にも資金的にも、全く及ばないからです。

 繰り返しますが、私は「人の生き様に優劣もないのと同様に、ビジネスプランにも優劣なんかあるわけがない」という意見です。