協業の前に知っておきたい「知識」の3つの性質

オープンイノベーションに必要な「知識のマネジメント」(前編)

清水 洋/2018.10.5

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 イノベーションを煎じ詰めると、そこには新しい知識がある。オープンイノベーションは、異なる組織の間で新しい知識を生み出す試みだと言える。それでは、どのようにその知識をマネジメントするのが良いのだろう。2回にわたって解説する。(前編・全2回/一橋大学イノベーション研究センター教授、清水 洋)

知識の3つの性質

 オープンイノベーションでは、通常の社内の知識マネジメントよりも難しさがある。同じ組織の中であれば、指揮命令系統を使って、何をするべきかを指示できる。しかし、組織をまたぐとそう簡単ではない。自分の会社の指揮命令系統の外の人たちに、経営資源を動員してもらわないといけないのである。

 ここでは、知識のすり合わせと創発性に焦点を当てて見ていこう。

 知識とは、「知ること」や「理解すること」、あるいは「知っている内容」や「理解している内容」などである。知識はさまざまな特徴をもっている。イノベーションという観点から重要になるのは、「消費の非競合性」と「利用の非排除性」「不可逆性」である。一つひとつ見ていこう。

(1)消費の非競合性

 消費の非競合性とは、同時に多くの人が利用できるというものである。ある人が美味しいパンの創り方を考え出したとしよう。そのパンのレシピが一度できてしまえば、そのレシピを見てパンを焼く人が増えたとしても、そのレシピを使う追加的なコストはほとんど無視できる程度に小さい。美味しいレシピは、同時に多くの人が使える。これを非競合性と言う。

 多くの財は、知識とは異なり競合的である。石油は、それを使う人が多ければ、当然、残された財は少なくなる。つまり、多くの財は競合性が存在するのであるが、知識は非競合的である。

(2)利用の非排除性

 2つ目の非排除性とは、他の人の利用を選択的に排除することが難しいという性質である。パンのレシピなど、知識は容易に移転が可能である。そのような知識がいったん広まってしまうと、その利用を選択的に排除することは極めて難しい。もちろん、知的財産権によって、他の人の利用を制限することはできる。しかし、知識そのものの性質として非排除性を持っているからこそ、特許などの知的財産権という制度によって、保護を行っているのである。