それでも「死の谷(笑)」を無事乗り越え、上場までたどり着ければ、A氏がストックオプションも含めて億円単位のキャピタルゲインを手にすることは可能です。しかし、こういった成り立ちの会社における取締役CTOが、キャピタルゲインの他に実用化後の特許料収入も得られる形になっているケースはあまり見たことがありません。

(1)のプランでも(2)のプランでも、実用化までたどり着けば億円単位の収入が准教授A氏には毎年あったはずですが、(3)のパターンではマザーズ上場に持ち分を売ったキャピタルゲインが一回しか入りません。

 明記しておきたいのは、何も私は(3)のビジネスモデルが悪いと言っているのではありません。(3)のやり方も、A氏の性格や動機によっては、十分以上に「アリ」です。「アリ」どころか、なかなかこんな幸運なプランを書けることも実際には珍しいです。さらに、好奇心旺盛なA氏のことですから、ベンチャー企業をCTOとして経営した経験は、A氏の人生にとってポジティブな経験をたくさん与えることになるとは思います。

 私が親友A氏に薦める(1)のプランでも、途中で大企業の経営方針が変わり、プロジェクトが中止になってしまうようなことは本当に数多く目にしますし、全てがバラ色ではありません。

 また、(2)のプランも優れたプランです。発明αが、さまざまな業種のさまざまな事業体に使ってもらうほうが広がるタイプの技術の場合は、私は(2)のプランを薦めることが多いです。ただし、主体となって進める組織がいないことが理由で、上手く事業化に至らず中座してしまうリスクも大きいプランであるように感じます。

 とにかく、どのビジネスプランが最も優れているかなんて、簡単には選べない、選べる訳がないということを、分かっていただきたいのです。

誰のためのビジネスプランか?

 簡単に優劣なんかつけられるわけがない、そもそも優劣をつける対象ではないにも関わらず、なぜ、ビジネスプランの優劣をつけるコンテストが、大学を中心に今花盛りなのでしょうか。

 そうです。このようなコンテストが存在することで、確実に得をするC氏のような立場にある人々の、営業努力の賜物だからです。