とはいえ、私が准教授A氏の友人なら本件の場合は(1)を薦めます。何より大事な発明αは世界を変えるポテンシャルがあるだけに、たったの数十億円調達した程度の規模のベンチャー企業で実用化しようとしても、日本で実用化までに必要な人材や機能を集めきることは不可能に近いと思いますから。

 また、私の親友であるA氏は、科学者として極めて優れた才能があるだけでなく、人柄も良く器用な男です。彼であれば、数万円の資金使途報告のような雑務や、ベンチャーに来る一癖も二癖もある人材たちの人間関係の整理さえも、器用にテキパキとこなせるでしょう。それでも私は親友として、A氏の才能の最も素晴らしいところだけを社会に向かって生かす人生でいてほしいとして考えるので、A氏には(1)を推薦します。

コンテストでウケるビジネスプラン

 一方で、この3つのビジネスプランを、准教授A氏が所属するX大学主催のビジネスプランコンテストに出したらどの案が選ばれるでしょうか。

 A氏が所属する有名国立大学Xは、ビジネスプランコンテストの審査員長として、数々の有名ベンチャー(A氏は一社も名前を知らないが)を輩出したことがある著名なベンチャーキャピタリストC氏を毎年招聘していることでしょう。

 准教授A氏より8歳若いC氏が主導するこのようなビジネスプランコンテストでは、当然のように(3)のビジネスプランが最も優れていると評価されます。優れていると評価されるだけでなく、さらにその場の即決で審査員長であるC氏が経営するベンチャーキャピタルから5500万円の出資を約束し、賞賛の声と共にFacebookで美談として拡散されるなんてことが起こります。

 ここで、留意してほしいのは、准教授A氏はなけなしの500万円を出資しているのにも関わらず、この時点で准教授A氏のシェアは既に15%だと言う点です。

(即決で5500万円出すことにしたC氏のベンチャーキャピタルが55%を、残りの30%はB君が持っています)

 その後、数年でB君のプラン通りに進んだとしても、順調に数十億円の調達を繰り返す中でA氏のシェアは一桁になります。もし、ちょっと事業化のスケジュールが遅れ資金調達が苦しくなると、准教授A氏のシェアはあっという間に数%になるでしょう。(“もし”ではなく、この時に立てられたスケジュールは“間違いなく”遅延しますが)