ブイヨンも手作り? 手が込んでいた昭和の家カレー

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(7)カレーライス

2018.08.24(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要
家庭料理の定番「カレーライス」。雑誌『栄養と料理』でも多数回、取り上げられている。

 1935(昭和10)年創刊の月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部刊)の2号目から付録についたのが1枚の小さなカード「栄養と料理カード」。健康に留意したおいしい料理が誰でも作れるように、材料の分量や料理の手順、火加減、加熱時間、コツなど納得のいくまで試作を重ね、1枚のカードの表裏に表現。約10×13cmの使いやすい大きさ、集めて整理しやすい形にして発表した。
 この「栄養と料理カード」で紹介された料理を題材に、『栄養と料理』に約30年にわたり携わってきた元編集長が、時代の変遷をたどっていく。
 なお、『栄養と料理』は現在も刊行している(http://www.eiyo21.com)。

 うだるような連日の猛暑、冷たいそうめんもいいが、カレーライスなら家族の誰もが喜ぶ。香辛料の作用で食が進む。一皿の中に肉や各種野菜が盛り込まれ、香辛料と香味野菜の風味が溶け合う。そして日本人の主食、ごはんとの相性がよい。これにお浸しやサラダなどの野菜料理があれば献立が整う。筆者は、残業で遅くなる日は家でよくカレーを作り置いていたが、玄関を開けたとたんに、家族は「今夜はカレー!」と喜んだものだ。

 小麦粉とカレー粉でとろみと風味をつけたカレーは、日本特有のもの。スーパーに行けば、即席カレールーだけでも目移りするほどの商品数がある。辛さでは甘口、中辛、辛口。形状では固形、フレーク、顆粒、ペーストとバラエティー豊か。我が家はもっぱら中辛のフレークタイプを愛用しているが、溶けやすく、分量の調整も容易なのがうれしい。

 生活習慣病が気になる人には「カロリー〇%オフ」や「塩分オフ」をうたう商品もあり、小さな子ども向けのものは「アレルギー特定原材料等27品目不使用」と表示しており、安心して購入することができる。これらのきめ細やかな品ぞろえに「日本人ってすごい!」と改めて思う。もちろん、手作り派には各種香辛料を選び、好みでブレンドして作る楽しみ方もある。

 日本人が初めてカレーを目にしたのは幕末期。その後、1872(明治5)年に刊行された日本で初めての西洋料理書『西洋料理通』(仮名垣魯文)、また『西洋料理指南』(敬学堂主人)に作り方が紹介されている。

 国産のカレー粉が発売されたのが1905(明治38)年。その後、婦人雑誌にカレーの作り方が紹介されるなどして家庭にも浸透した。以降、日本独自のカレーとして発展、進化して現在に至っているといえるだろう。

「栄養と料理カード」にカレーライスが登場するのは1938(昭和13)年6月号。玉ねぎを炒め、小麦粉とカレー粉でルーを作るところから始まる。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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