想像以上の働き者、胃の正しいメンテナンス方法

考究:食と身体(4)炉の神ヴェスタ篇

2018.07.27(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要
あなたの体でも、食事のたびに強酸性の胃液が分泌されている。だが、胃の働きは食物の消化だけでない。アイコンは炉の神ヴェスタ。

 私たちは「食」の行為を当然のようにしている。では、私たちの身体にとって「食」とは何を意味するのだろうか。本連載では、各回で「オリンポス12神」を登場させながら、食と身体の関わり合いを深く考え、探っていく。

(1)主神ジュピター篇「なぜ食べるのか? 生命の根源に迫る深淵なる疑問」
(2)知恵の神ミネルヴァ・伝令の神マーキュリー篇「食欲とは何か? 脳との情報伝達が織りなす情動」
(3)美と愛の神ヴィーナス篇 匂いと味の経験に上書きされていく「おいしい」記憶

 美味な食事の提供を通して将来のパートナーとなる人を得たとき、「胃袋を掴んだ」と表現することがある。しかし、「味で惹きつけた」ではなく、なぜ「胃袋を掴む」なのか。

 それは、手料理と相手の体とがシンクロする様を「胃袋」という臓器で表現しているのであろう。

 どれだけ料理が美味しくても、提供された食事が原因でトイレや病院に直行するような不調和な状況では、到底「胃袋を掴む」には至らない。やはり、食事の美味しさ以外に、食後に胃が心地よく働くことも含めた生活の流れが「胃袋を掴む」ために必要なのではないか。

 では、胃が心地よく働くとは何なのか。

胃の働きは食物の消化だけではない

 嚥下(えんげ)され、食道を通って無事に胃へたどりついた食物は、消化酵素を含んだ「塩酸の海」に放り込まれる。ご存じのとおり、胃の中は歯のエナメル質をも余裕で溶かすようなpH1の強酸性になっている。よって、食物と一緒に入ってきた微生物の多くは、増殖する間もなく胃液の中で死滅してしまう。結果的に食物の殺菌は胃で行われてしまうわけだ。

 微生物の立場に立てば、胃に入るというのは、沸騰こそしていないものの、「塩酸の炉」に放り込まれたに等しいのである。

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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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