食欲とは何か? 脳との情報伝達が織りなす情動

考究:食と身体(2)知恵の神ミネルヴァ・伝令の神マーキュリー篇

2018.05.25(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要
食欲はどこからやってくるのだろうか。アイコンは知恵の神ミネルヴァと伝令の神マーキュリー。

 私たちは「食」の行為を当然のようにしている。では、私たちの身体にとって「食」とは何を意味するのだろうか。本連載では、各回で「オリンポス12神」を登場させながら、食と身体の関わり合いを深く考え、探っていく。

(1)主神ジュピター篇「なぜ食べるのか? 生命の根源に迫る深淵なる疑問」

「智に働けば角が立つ、情に棹(さお)させば流される、意地を張るのも窮屈だ。兎角(とかく)に人の世は住みにくい」

 夏目漱石『草枕』の有名なこの一節、実は、私たちが日頃感じている「食と身体」についての不条理さも、よく表しているように思う。

 元の作品の意図からは外れるものの、智に傾き「何々は体に悪いから絶対に食べない!」では、社会生活に角が立つこともあろう。反対に「付き合いだから」と言って、成り行きでついあれこれ余計に食べ過ぎてしまったりする。そして、「健康のために何々は我慢」という生活も窮屈である。食と身体にもまた、智・情・意の要素が複雑に絡み合っているのだ。

 とはいえ、人の世とは違って、私たちの身体には智・情・意をそれぞれ一定限度で調整する「食欲」という優れた機能が備わっている。食欲が低下すれば食べたくなくなり、食欲が出てくれば何か食べたくなる。そして、食欲は永遠に続くわけでもないし、消失したままということもない。

 では、その食欲はどうやって生じたり消えたりしているのだろうか?

食欲の発生は、脳への情報伝達がカギ

 日頃の実感からすると、食欲は胃袋の満たされ具合によって調節されているように思える。すなわち、胃の内容物が減少すると食欲が刺激され、満腹になれば食欲は減少するという具合だ。

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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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