究極の時短料理? 群馬に伝わる「おっきりこみ」

製糸業や農業の多忙で広まった郷土料理

2018.07.06(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要
群馬県の郷土料理「おっきりこみ」。幅広の生麺を野菜などとともに煮込み、味付けする。

 群馬県では古くから小麦の生産が盛んで、小麦粉を使った料理の種類が多い。中でも「おっきりこみ」は、県内で広く親しまれている郷土料理だ。おっきりこみから、粉食を常食する文化が地域に根付いていることを知った。

稲と小麦、いまも続く二毛作

 所要のため、毎週、群馬県東毛地域(南東部)へ通っている。6月初旬、車窓には緑色の水田が広がっていたが、その中に茶色い畑が点在していることに気がついた。「もしや麦畑?」と思いつつ、2週間もすると水田に変わっていた。

 その後、この地域では稲と小麦の二毛作が行われていることを知った。人びとは、日照時間の長さや湿度の低さなど小麦栽培に適した土地であることを生かし、古くから水田の裏作として小麦を盛んに栽培している。稲刈り終了後に小麦の種をまき、6月に収穫。その後、慌ただしく田植えが始まる。車窓から見えたのは、ちょうど小麦収穫時期の光景だったのだ。

群馬県内を走る東武鉄道の沿線に広がる麦畑。

 群馬県は、中央部に赤城山や榛名山がそびえ立ち、その山麓から関東平野までひらけている。東毛地域はその東端の平地であるが、平地の少ない山間地域でも、雑穀やそばとともに小麦が多く栽培されている。

「日本は米食の国」というイメージがあるが、誰もが白米を食べられるようになったのは戦後だいぶたってからである。それまでの日本人の食生活を支えていたのは、ヒエやアワなどの雑穀や麦だった。群馬県では、小麦栽培が盛んな土地柄から、まんじゅうや麺類などの粉食が日常食には欠かせなかった。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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