茨城高専の世界最高度分析装置でイワシの生態解明へ

「弱」をつけられた魚の値打ち(後篇)

2018.07.20(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
大群をなして泳ぐマイワシ。回遊経路の全容はまだ把握されていない。

 身近な魚の1つ、「鰯(イワシ)」に光を当てている。

 前篇では、人びとのイワシに対する価値観の移ろいなどを追った。水から出るとすぐ死ぬ、あるいは柔弱で腐りやすい「弱い魚」とされてきたが、イワシの真価を感じていたからこそ人びとは料理を工夫したり、缶詰づくりに挑んだりしてきたのだ。

 イワシを巡っては、数年やそれ以上にわたる豊漁期と不漁期を繰り返すことが知られている。近年、地球規模の基本構造転換(レジームシフト)が要因であると研究者たちに指摘されている。

 だが、イワシがどんな環境で一生を過ごすのかといった「全体の絵」は、まだ描かれていない。それが得られれば、データを根拠とした資源管理ができるようになり、持続可能な漁も可能となるはずだ。

 そんな「全体の絵」を得ることにつながる技術が日本で開発されている。イワシの「耳石(じせき)」を分析することで、生態の全容解明が目指されているのだ。世界無二のレベルの分析装置が、茨城県の高等専門学校で使われているという。開発者らに話を聞いた。

資源量の変動を巡る傾向は見えてきたが・・・

 イワシは回遊魚。つまり、定まった時期にほぼ一定の経路を移動する魚だ。これまで人びとは経験的に、「入梅のころから銚子沖でマイワシが獲れる」とか、「春先から氷見沖でマイワシが獲れる」と承知し、漁を営んできた。

 豊漁と不漁を繰り返すことについては、「レジームシフト」が要因と1980年代より考えられるようになった。レジームシフトは、地球規模で気候の状態が移ろう現象のこと。たとえば、寒冷期になるとマイワシは豊漁となる。同じイワシ類でも、カタクチイワシでは逆の傾向がある。複数種類の魚が交互に増加する現象は「魚種交替」と呼ばれる。

 このようにして、イワシの資源量の変動を巡る傾向は見えてきた。だが、それだけでは「全体の絵」を得たことにはならない。一生の中でイワシが海のどんな環境下で過ごすのか、その詳細は分かっていないからだ。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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