ただ、「円が下がる」と予想した投資家達が円売りに走ったことにより、円安による物価上昇は起きました。1ドル80円程度だったものがピーク時で120円を超えたのだから当然です。そこに2014年度の消費税増税が加わりましたので、アベノミクス開始後3年間で、物価は約5%程度上昇しています。勘違いしてはいけないのは、日銀の目標は「前年比」2%の物価上昇であり、「アベノミクス開始後」2%の物価上昇ではありません。しかもそれは増税による影響を除いています。日銀の試算によると、消費税増税による物価上昇は2%です。したがって、アベノミクス開始後3年の間に、増税で2%、円安で3%物価が上昇したと考えられます。みんなの持っているお金(マネーストック)はたいして増えなかったが、お金の価値だけが下がってしまった、ということです。

実質賃金が下がり、消費が歴史的落ち込み

 異次元の金融緩和で消費も伸びると言われていましたが、結果は真逆でした。実質民間最終消費支出の推移を見てみましょう(下のグラフ)。

実質民間最終消費支出(兆円)
(『アベノミクスによろしく』図3-1と同じデータを使用)

 見てのとおり、2014年度~2015年度にかけて「2年度連続で下がる」という戦後初の現象が起きました。また、2014年度の前年度比下落率(約2.9%)は、あのリーマンショック時の下落率(約2%。2008年度)を上回りました。さらに、2014年度、2015年度共に、アベノミクス開始前(2012年度)を下回ってしまいました。実質民間最終消費支出は実質GDPの約6割を占めていますので、実質GDPの方も悲惨な結果となりました。

年度実質GDP(兆円)
(『アベノミクスによろしく』図3-3と同じデータを使用)