つまり、私たちは、「世界最悪レベルの債務を背負った状態で生産年齢人口が急減し、高齢者は増大していく」という、人類が経験したことの無い未曽有の事態に突入しているのです。当然、現役世代の一人当たりの税・保険料負担は増えていき、その分、可処分所得が減ります。さらに、消費する人間の数も急激に減っていきますから、国全体の消費は落ちていくでしょう。GDPの6割は国内消費ですから、消費が落ちればGDPも落ちます。日本が経済成長し続けることは不可能です。

 こういった未来が待っていることを前提に、アベノミクスを見てみると、「究極の現実逃避」であると思います。これほど財政が悪化すれば、普通は国債の金利が上がって借金返済額が増大し、増税せざるを得なくなります。しかし、日銀が国債を爆買いしているおかげで、金利が無理やり低く抑えられており、増税先送りが可能になっています。

 円の信用を保つため、日銀が国債を直接引き受けることは財政法5条で禁止されていますが、今の日銀は、いったん民間金融機関に国債を買わせて、すぐさまそれを買い上げる、という手法を取っています。最終的に日銀がお金を出すという点では、直接引受と同じです。もう「異次元の金融緩和」ではなく「脱法借金」と呼ぶべきでしょう。今この脱法借金を止めると国債が暴落して金利が跳ね上がり、円も暴落するでしょうから、もう止められません。だから続けるしかないのですが、これで円の信用を維持できるとは思えません。

 2018年6月15日に、「経済財政運営と改革の基本方針 2018」(骨太の方針)が閣議決定されましたが、経済成長による財政再建が強調される内容となっています。「経済成長すれば何とかなる」という発想でずっと失敗し続け、負担を先送りにして借金を膨らませてきた日本ですが、いまだにその路線を維持しているのです。

 なお、消費税増税については、耐久消費財における増税後の反動を和らげるため、「税制・予算による十分な対策を具体的に検討する」と書かれています。要するにお金を使うということですが、財政を立て直すために増税するのに、さらに支出を増やすのは矛盾しています。

 政府は円の信用が失われるまで脱法借金を継続し、「経済成長できます」という幻想を国民に見せ続けるのでしょう。国民が騙されていたことに気づくのは円が暴落した後のことになります。

(*)文中で引用している人口推計のデータは下記URLを参照しています(国立社会保障・人口問題研究所)。
75歳以上人口
生産年齢人口