ご覧のとおり、2015年度の実質GDPは、2013年度を下回ってしまいました。3年分の成長が1年分の成長を下回ったということです。この間の成長率は約1.9%であり、3年もかけて2%の成長率にも届かないという惨憺たる結果となりました。

 これほど低迷した原因ですが、実質賃金(物価を考慮した賃金)が下がったことが最も大きいでしょう。名目賃金、実質賃金、消費者物価指数の推移を見てください(下のグラフ)。

名目賃金、実質賃金、消費者物価指数(2010年=100)
(『アベノミクスによろしく』図3-11と同じデータを使用)

 要するに(1)賃金がほとんど伸びないのに(黄)(2)物価が増税と円安で急上昇したので(赤)(3)実質賃金が急激に落ちた(緑)ということです。実質賃金指数の計算式は名目賃金指数÷消費者物価指数×100です。つまり、名目賃金が伸びないのに物価だけ上がると実質賃金が落ちます。

 増税も円安も「物価が上がる」という面では全く効果は同じです。それが同時に来た一方で賃金がほとんど上がらなかったのですから、消費が歴史的落ち込みを記録したのは当然です。結局、国民はアベノミクスによって単に実質賃金を下げられただけだった、ということです。なお、「実質賃金が下がったのは、非正規雇用が増えて賃金の平均値が下がったから」というもっともらしい説が流布されていますが、ウソです。平均値の問題なら名目賃金も下がるはずですが、グラフを見れば分かるとおり、下がっていません。

 アベノミクスは「資金需要はあるはず」「物価が上がれば勝手に賃金も上がるはず」という2つの仮定を前提にしていました。しかし、それは間違いだったのです。前提が間違っているので、うまくいかないのは当然です。アベノミクスがもたらしたのは、円安による為替差益と株価の上昇だけであり、ごく一部の国民しか恩恵を受けていません。

 なお、株価の上昇は、金融緩和、年金資金の投入、日銀のETF購入によって吊り上げられたものであり、経済の実態を反映していません。特に最近は日銀による株価の下支えがひどくなっています。

 雇用改善についても、生産年齢人口の減少、高齢化による医療・福祉分野の需要増大、雇用構造の変化(非正規雇用の増大)が重なってもたらされたものであり、アベノミクスとは無関係です(詳細は拙著『アベノミクスによろしく』をお読みください)。