明らかにおかしいですね。アベノミクス以降“だけ”が大きくプラスになっています。平均すると5.6兆円もプラスです。他方、他の年度はプラスどころかマイナスばかりで、特に90年代は全部マイナスになっています。マイナスの金額も大きい。

 では、先ほどの改定後の名目GDPから、この「その他」を差し引くとどうなるのか見てみましょう(下のグラフ)。

「その他」を引いた改定値
(『アベノミクスによろしく』図4-1および7と同じデータを使用)

 全然違いますね。1997年度と2015年度の差は13.4兆円もあります。つまり「その他」によって、1997年度を含む90年代の数値を大きく引き下げ、他方でアベノミクス以降を大きく引き上げるという調整がされたことが分かります(この問題についてのより詳しい分析は私のブログに書いてありますので、あわせてお読みください)。

 こうやって名目GDPを大きく調整したことにより、「2年度連続実質民間最終消費支出下落」「実質GDPが2年度前を下回る」といったアベノミクス失敗を象徴する現象は消滅し、実質成長率も2倍近く上昇しました。そして、2016年度はめでたく史上最高の名目GDPを記録し、以降それを更新し続けている、という状況になっているのです。

政府が国民に見せ続けている「幻想」

 日本の政府総債務残高(国と地方の債務合計)の対GDP比は約240%であり、2位のギリシャ(約180%)を引き離し、先進国の中でぶっちぎりのワースト1位になっています(IMF。2016年)。

 これだけ債務が膨らんだ原因は、社会保障費の増大が最も大きく影響しています。社会保障費は、今後さらに膨らんでいきます。社会保障費の大半を占めるのは年金・医療・介護費であり、高齢者が増えると社会保障費も増えます。高齢者(65歳以上)の数は2042年に3935万2000人でピークを迎えるとみられます(国立社会保障・人口問題研究所の推計。出生・死亡中位)。2018年と比べると、だいたい370万人ぐらいの増加です。

 しかし、社会保障費がより多くかかる後期高齢者(75歳以上)に限定すると、ピークはもっと先で2054年。人数は2449万人で、2018年と比べるとだいたい650万人増える計算になります。

 ではその後期高齢者を支えるべき生産年齢人口(15歳~64歳)がどうなるのかというと、2054年には5072万6000人。なお、2018年の生産年齢人口は7515万8000人です。後期高齢者数がピークを迎える年に、今より2443万2000人も生産年齢人口が少ないということです。