原油市場のかく乱要因を生み出した米朝首脳会談

会談の“成功”でトランプ大統領の「米国第一」政策が先鋭化

2018.06.22(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53367
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 だが専門家の間では、「中国に大量に輸入された原油はどこに消えたのか」という疑問が浮上し始めている。

 中国の需給バランス(原油純輸入量と国内生産量の合計から原油処理量を差し引いたもの)はこのところ供給余剰が続いており、直近1年間の累計余剰量は4000万トン以上に達している。これまでその余剰分は備蓄に回っているとされてきたが、政府の戦略石油備蓄の容量はその間に400万強しか増えておらず、商業在庫も2014年6月をピークに減少傾向にある。

 筆者は「茶壺(ティーポット)」と称する民間製油所がその鍵を握っていると見ている。2016年に原油輸入が解禁された茶壺の原油輸入量はうなぎ登りで上昇し、現在の中国全体の原油輸入量の2割を占めるに至っているが、その活動は不透明な部分が多い。地方政府が地域活性化の観点から茶壺を応援しているが、その一環として原油処理量を過少に申告することで茶壺に税制上のメリットを享受させているのではないだろうか。だが、茶壺の急成長で経営が圧迫されている大手国有企業の訴えに応じて中央政府が茶壺に対する規制を強化しつつあり(6月13日付OILPRICE)、茶壺が税制上のメリットを失えば、中国の原油輸入量は今後鈍化する可能性が高い。

 中国ではこのところ「米中貿易戦争の末、バブル崩壊に直面する」との懸念が広まっている(5月9日付日経ビジネスオンライン)。トランプ大統領は中国の対米貿易黒字額を1000億ドル減らすことを目指している。この額は中国の2017年の貿易黒字額(4225億ドル)の4分の1に相当する。債務急増に悩む中国経済にとっての生命線は海外からの巨額のマネー流入であるが、このマネーの流入が大幅に減少すれば、資金繰りに窮した企業の大量倒産を招くことは必至である(貿易摩擦の激化により中国の株式相場は急落している)。

 中国は今のところ米国への対抗姿勢を強めているが、米国と協力して新たなグローバル貿易秩序を制定できなければ、中国経済のハードランディングが現実のものとなり、これにより原油価格は大幅下落するだろう。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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