原油市場のかく乱要因を生み出した米朝首脳会談

会談の“成功”でトランプ大統領の「米国第一」政策が先鋭化

2018.06.22(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53367
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 6月15日、トランプ大統領が約500億ドル相当の中国からの輸入品に対する制裁関税(25%)を7月6日から発動することに承認すると、米中貿易戦争の激化で中国の原油需要が減少するとの不安から投機家の手仕舞い売りが活発化した。

 6月初旬の協議では中国側が700億ドル規模の輸入拡大策を示し、貿易摩擦が沈静化するとの期待が高まっていた。だが、トランプ政権は中国に対して強硬姿勢に転じる。「北朝鮮と直接コミュニケーションをとる手段が確保できたため、中国の北朝鮮に対する影響力が対中関税を控える理由にはもはやならない」とトランプ大統領が考えるようになったからである(6月15日付ロイター)。

 北朝鮮の非核化を進め朝鮮半島の緊張が緩和されることを自国の利益と考える中国も、米朝首脳会談をなんとしてでも成功させたかった。このため事前に北朝鮮との間で2回も首脳会談を行い、金正恩労働党委員長がシンガポールに移動するための飛行機を提供した。その裏に「米国との関係を改善に資する」との思惑があったことは想像がつく。

 だが、あろうことか、米国は中国に対して恩を仇で返した。いきり立った中国は500億ドル規模の米国への制裁案を即座に発表したが、従来の案になかった「原油」への制裁が加わったことは意外だった。米国の非礼に対する感情的な反発(虎の子のシェールオイルへ打撃を与える)からだろうが、中国の米国産原油の輸入量は日量30万~40万バレルに拡大しており、安い米国産原油が調達できなければ中国国内でインフレを招くリスクを抱えることになる。代わりにイラン産原油の輸入を増加させれば、米国との関係は一層悪化するだろう。

 金正恩氏との間にホットラインができたと豪語するトランプ大統領は6月18日、中国の報復措置を踏まえ、「新たに2000億ドル分の輸入品に対して10%の関税を上乗せする」よう指示した。米中貿易摩擦の拡大は、国際エネルギー機関(IEA)が指摘したように「世界の原油需要にとって最大のリスク」となっている。

中国の原油輸入は今後鈍化か

 主要産油国の協調減産とともに原油価格を下支えしてきたのは、中国の旺盛な原油需要である。5月の原油輸入量は日量平均923万バレルを記録するなど今年に入ってもその堅調さを維持している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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