原油市場のかく乱要因を生み出した米朝首脳会談

会談の“成功”でトランプ大統領の「米国第一」政策が先鋭化

2018.06.22(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53367
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本性を現したトランプ大統領の「米国第一」政策

 トランプ大統領の「米国第一」政策は中東地域でも現れ始めている。

 米朝首脳会談後の記者会見でトランプ大統領は、「とてもお金がかかるし、挑発的だ」として米韓合同軍事演習の中止を示唆した(6月19日、米韓両政府は8月の演習中止を正式決定した)。中東でも米軍の海外での展開を縮小する兆しが現れている。米朝首脳会談の翌日、サウジアラビアが率いるアラブ連合軍が、イエメンの反政府武装組織フーシ派の支配下にある港町ホデイダへの大規模な攻撃を開始した。その際、アラブ連合軍の期待に反し、米軍は自らが保有する掃海艇の提供を断ったのだ(6月15日付CNN)。

 アラブ連合軍は軍用機と沖合に停泊する軍艦から複数の拠点を攻撃したが、フーシ派が沿岸部に機雷を設置していため、ホデイダ奪還のためには掃海艇の運用が不可欠であった。サウジアラビアは、米国内のガソリン価格を下げるために原油の増産要請に応じることで、米軍の支援を当てにしていた。しかし、「空振り」に終わってしまった。

 アラブ連合軍は、急遽フランスから掃海艇を確保するなど躍起になっているが、フランスが要請に応じるかどうかは分からない。アラブ連合軍はホデイダの空港を占拠した(6月20日付AFP)が、フーシ派もアラブ連合軍の兵站部隊に攻撃を加えたとの報道(6月18日付ブルームバーグ)があり、米軍の支援なしにはホデイダ奪還作戦の先行きはおぼつかなくなくなっている。

 サウジアラビアはイエメンへの軍事介入で既に1200億ドルを支出したとされている。ムハンマド皇太子が頼みとする外国からの直接投資額は2016年の75億ドルから昨年は14億ドルに減少した。昨年11月の反汚職キャンペーンの悪影響が続いており、国内の投資マインドも冷え切ったままである(6月15日付ブルームバーグ)。昨年マイナス成長となった国内経済は、一向に回復する兆しを見せていない。

 泥沼化するイエメン情勢に加え、国内経済の悪化により、「ムハンマド皇太子に対する国民の熱烈な支持が失われ、サウジの政治体制に激震が走る」日は遠くないかもしれない。そうなれば原油相場は未曾有の地政学リスクに見舞われることになる。

 米朝首脳会談の「成功」で本性を現したトランプ大統領の「米国第一」政策が、原油市場に今後どのような影響を与えるか、予断を排して注視していくことが肝要である。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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