日本とインドの移民政策を批判、経済成長できないのはそのためだと指摘したジョー・バイデン米大統領(5月1日、写真:AP/アフロ)

問題はロシア、中国と同列でなじったこと

 ジョー・バイデン米大統領が首都ワシントンで行われたアジア系米国人支持者を対象にした政治献金集めのイベントで、大統領選で最大の事案になっている移民問題に触れた次の発言が炎上している。

米国の経済が成長しているのは移民を受け入れているからだ。なぜ日本は(経済)問題を抱えているのか。それは彼らがゼノフォビア(Xenophobia=外国人嫌悪症)で移民を望んでいないからだ」

 代表取材記者の「プール・リポート」によれば、そのくだりはこうだ。

「我々の経済が成長している理由の一つは、あなたたちとその他の多くの(アジア系や中南米系の)移民を受け入れているからだ。我々は移民の皆さんを歓迎しているからだ」

「なぜ中国の経済がひどく失速しているのか。なぜ日本は問題を抱えているのか。なぜロシアもインドもそうなのか」

「それは彼らが外国人嫌悪症に罹っており、移民を望んでいないからだ」

「移民は我々米国を強力にしている。これはジョークではない。我々は外国人嫌悪症には罹ってはいない」

「我々には流入労働者がいる。彼らは米国に来たがっており、米国に貢献したがっている」

washingtonpost.com/biden-xenophobic-japan-china-russia-india/

 暴言か、失言か。あるいは本心か。

 暴言は、ライバルのドナルド・トランプ前大統領(事実上の共和党大統領候補)の専売特許と思いきや、バイデン氏も暴言、失言はこれまでにも多く、特に副大統領当時は事実誤認や思い違いの共和党批判を繰り返し、弾劾決議案提出の動きすらあったくらいだ。

 いくつか例を挙げよう。

「共和党政権下では富裕層は減税、中産層は増税対象となり、葬りさられた」

ウォールストリートは銀行の入り口にチェ―ンをかけ、黒人顧客を締め出した」

「異性カップル、同性カップル、両性カップルも同じ公民権を享受するのを見ても、はっきり言って何ら違いがあるとは思えない」

 解釈の仕方によっては議論を呼ぶ発言が目立ち、バラク・オバマ大統領を困らせることがあった。

 しかも「私の発言に批判する者がいないのは私の言っていることがしばしば本心だったからだ」とまで開き直っていた。

 今回の「外国人嫌悪症」発言が問題なのは、同盟国の日本と中国、ロシア、インドと同列に並べて批判し、「これはジョークではない」と言い切ったことだ。

 日本政府が非公式な形で米政府に抗議する前に、ブルームバーグはストレートニュースには「解説」も「憶測」も入れないのが米ジャーナリズムの原則であるにもかかわらず、こう報じた。

「バイデン大統領は3週間前、ワシントンで岸田文雄総理大臣を国賓待遇で歓迎したばかりだ」

「中国の経済的な苦しさと移民の受け入れを関連づけて指摘したことはあったが、今回はロシアだけでなく、長年の同盟国である日本も加えた」

「彼の批判は日本の反発を招くかもしれない」

 当然のことだが、日本政府は5月3日までに「日本の移民政策に対する正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」と米側に申し入れた。

 一方、ホワイトハウスも対応に追われた。カレン・ジャンピエール大統領報道官は記者団にこう釈明した。

「バイデン大統領は米国のDNA、つまり米国は移民によって構成された国家である点を強調したものだ。同盟国はそのことをよく理解しているはずだ」

「移民がいかに米国を強くしているのかについて話していた。日米関係は重要であり続ける」

 また国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は、こうバイデン発言を弁護した。

「ホワイトハウスの外部からは何の反応も届いていない。皆(日本、インドはバイデン発言の)意味について完全に理解しており、同盟国、パートナーシップの意義に価値を置いている」

 大統領周辺はこの「高齢大統領」の失言が日本やインドとの関係に悪影響を及ぼさないように必死だ

(問題は高齢が失言の原因ではないかもしれないことだ)