その隠密性・残存性を高める潜伏海域として南シナ海の重要性が認識され、そのため中国は、近年、南沙諸島の岩礁埋め立て・軍事拠点化を強引に進めており、米中間の緊張を高める要因となっている。

 このような米露間の応酬あるいは米中間の緊張が示すように、世界では現実に核戦略上の熾烈な戦いが繰り広げられている。

 核廃絶を叫ぶだけで、核問題に対して議論することさえも拒んでしまう核アレルギーを持ち、国家の防衛に当事者意識の希薄な日本人の多くは、一連の動きに一瞥の関心も示さなかったに違いないが・・・。

 さらに、核戦略の専門家として高名な米国戦略国際問題研究所(CSIS)のクラーク・マードック氏の論文「2025-2050:Recommended U.S. Nuclear Strategy」によると、2030(+)年頃には核保有国が9~11か国となり、2050年までにそれ以上~18か国未満に拡大すると予測している。

 地域的には、中東圏、北東アジア、欧州での拡散が顕著となり、核兵器の応用的使用としての「核によるHEMP攻撃」の危険性が増大するとも指摘している。

 これが、核兵器をめぐる世界の現実であり、冷戦期を「第1次核時代」(The First Nuclear Age)とすれば、いま世界はコリン・グレイ氏が指摘する「第2次核時代」(The Second Nuclear Age)という「核の恐怖時代」に再び突入しているのである。

 これまでは、比較的安定した米ソ(露)の2国間対立であったが、そこに核・軍事大国として台頭する中国、さらにインド、パキスタン、イスラエルに北朝鮮までが加わった多国間問題へと形が変わり、それがゆえに、複雑で不安定そして危険な核対立の構造へと国際情勢は悪化の一途をたどっている。

 50歳代半ばのオバマ大統領が「プラハ演説」そして「広島スピーチ」で「私の生きている間は実現されないだろう」と述べたように、核廃絶の道のりは遅々としてなお険しく、逆に核が拡散し、その脅威が増大している現状から、むしろ理想追求の目標は遠退いているのが国際社会の現実である。

 その意味において、現実世界から見れば、「核兵器のない世界」は欺瞞的であるとの指摘や批判から免れることはできないのではないだろうか。