冷戦後の米国の核戦略は、クリントン政権による「核態勢見直し」(NPR)に始まり、ブッシュ政権下で「第2次核時代」(下記コラム参照)に対応する現実路線を指向した。

【コラム】第2次核時代

 抑止理論の戦略理論家として有名な英国のコリン・グレイ(Colin Gray)は、1999年に出版した『第2次核時代』(The Second Nuclear Age)の中で、米ソという2国間だけで争われていた「第1次核時代」と比べて、現代はソ連よりもリスクを恐れない無数の地域同士の国々の争いに象徴される時代を第2次核時代である、と指摘している

 その後、オバマ政権になって、大統領が宣言した「核兵器のない世界」の方針に基づき、よりリベラルな方向へと核政策を転換し、同政権下で行われた2010年の「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)と「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)、そして2010年の「核態勢の見直し」(NPR)に大なり小なり影響を及ぼしたのは事実である。

●恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界
「核兵器のない世界」は欺瞞的

 1970年に発効した核兵器不拡散条約(NPT)は、国連安保理常任理事国と重なる米、露、英、仏、中の5か国を「核兵器国」(NPT適用上、1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国)と定め、それ以外への核兵器の拡散防止を目指したものである。

 しかし、1970年代のインドやイスラエルの核開発に始まり、現在、パキスタン、北朝鮮を加えて核兵器保有国は9か国に増え、今後も拡大し続けるとみられている。すでにNPT体制は崩壊したとの指摘には、率直に耳を傾けざるを得ないだろう。

 他方、2009年の「プラハ演説」以来7年間余り、オバマ大統領の「核兵器のない世界」政策は、米露間での核弾頭の一部削減やテロリストによる核物質の入手阻止、イランの核関連活動の制限(「包括的作業共同作業(JCPOA)」の合意)などの分野で一定の成果は認められよう。

 世界の核兵器の9割以上を保有する米国とロシアは、戦略兵器削減条約(STARTⅠ)以来、戦略攻撃能力削減条約(SORT)や2011年に発効した新STARTに基づいて核兵器を少しずつ削減してきたため、世界の核兵器(弾頭数および運搬手段)総数自体は緩やかに減少している。

 しかし、新STARTの合意内容は、発効後7年以内に、配備核弾頭数を1550発に、ミサイルや戦略爆撃機などの運搬手段を700基(非配備を含めると800基)に、それぞれ上限として削減するに過ぎない。

 しかも、両国は、その削減分を補うかのように、核弾頭と運搬手段およびその生産に関して「広範かつ巨額を投じる長期的近代化計画」を進めている。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2016年版報告書によると、中国は核弾頭数を増やし(約260発、前年比10発増)、核兵器の近代化や新たな核兵器システムの開発を進めている。