さらに、北朝鮮が米国に届くICMBを完成させるのは時間の問題と見られており、日本が核の威嚇や攻撃を受けた場合、北朝鮮の報復を恐れて米国が反撃を躊躇うようなことは大いにあり得ることである。

 そうなると、日本に対する米国の拡大抑止(核の傘)に穴が開くことは明白であり、それを埋めて抑止の体制を維持するためには、わが国に米軍の戦域・戦術核を配備させることも有力な選択肢の1つである。

 さらには、NATO諸国のように、有事に使用権を行使できる米国との核共有(Nuclear Shearing)に踏み込むことなども、真剣に論議すべき時に差し掛かっているのではないか。

 核兵器について④言わず、⑤考えずの「非核五原則」は、わが国の安全保障・防衛を強化するうえで、「百害あって一利なし」である。

 いま眼前に迫っている国家的危機あるいは国難を打開するには、国政の場はもとより、広く国民の間で、自由で真剣な、また現実的で責任のある核論議を積極的に展開しなければならない。

 そして、すみやかにわが国の核政策の方向とそのあり方に関する論議を集約し、直ちに具体的な政策・措置として実行に移すことが必要であり、そのために、政治の強力なイニシアティブによって国民の合意形成を急がなければならない。

「リード・バット・ヘッジ」政策の追求
「核兵器のない世界」の理想追求と「核兵器のある世界」の現実対応は矛盾しない


 前述の通り、世界には「核兵器のない世界」と「核兵器のある世界」の2つがあり、その現実を直視したうえで、状況に即応した実効的な政策が必要である。

 「核兵器のない世界」は追求すべき目標として具体的措置を講じながら、その達成に至るまでの間、「核兵器のある世界」での確実な抑止を維持しなければならない。

 つまり、核不拡散・軍縮を「リード」する一方で、核の脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」の政策がなければ、国の平和と安全は確保できない。

 言い換えれば、「核兵器のない世界」の理想を追求することと「核兵器のある世界」に対応することは、一見矛盾した行為のように見えるかもしれないが、世界の現状を踏まえれば、決して矛盾したものではなく、それは現実主義からの確かな回答と言えるのではないだろうか。