恐怖の「第2次核時代」へ突入した世界
「核兵器のない世界」は欺瞞的

●オバマ大統領の「核兵器のない世界」宣言

 米国のバラク・オバマ前大統領は、2009年4月、チェコ共和国首都での「プラハ演説」(「プラハ・アジェンダ」)において平和で安全な「核兵器のない世界」に向けた現実的かつ具体的な方途を追求すると明確に宣言した。

 そして、2016年5月、唯一の戦争被爆国である日本で開催された伊勢志摩サミットに出席したのち、現職米大統領として初めて広島平和記念公園を訪問し、改めて「核兵器のない世界」の実現を世界に向かって訴え、その活動を主導する責任についても言及した。

 これを機に、わが国では、「核兵器のない世界」がにわかに到来するのではないかとの国民の期待感がいやが上にも高まり、マスコミでは一段と平和主義的論調が目立つようになった。

 しかしオバマ前大統領が「核兵器のない世界」を提唱する背景には、前述の北朝鮮の核ミサイル開発に見られるように、それに逆行する国際社会の動きが急速に進行している不都合な事実があり、核拡散防止への取り組みを急がねばならない深刻な問題が存在しているのである。

 オバマ大統領の「核兵器のない世界」宣言は、ウィリアム・ペリー元国防長官(民主党クリントン政権)、ジョージ・シュルツ元国務長官(共和党レーガン政権)、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官(共和党ニクソンおよびフォード政権)そしてサム・ナン議員(民主党)による「4賢人の『核のない世界』への提言」(2007年~8年)を採り入れたものである。

 提言は、「核報復の脅しによる抑止戦略はもはや時代遅れになり、核兵器に依存することは今や危険で非効率的になっている」ので、「核のない世界を目指すべきである」と説いた。

 そして、スーザン・ライス国連大使ら約30人で構成されたオバマ前大統領の「核政策チーム」が、4賢人の提言を基に具体化したのが「核兵器のない世界」である。

 核政策チームは、人間の安全保障優先、核の役割軽視あるいは軍縮派などのリベラリストと国家の安全保障優先、核の役割重視あるいは抑止派などのリアリストをもって構成され、それぞれの主張をバランスさせた折衷案としてまとめ上げた。

 すなわち、核不拡散・軍縮を「リード」するとともに、脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」政策となっている。

 その政策では、世界には「核兵器のない世界」と「核兵器のある世界」の2つがあり、「核兵器のない世界」は目指すべき目標として具体的措置をとりながら、それが達成されるまでの間、「核兵器のある世界」での確実な抑止を維持するとされたのである。