2017年7月、核兵器を国際人道法に違反するものだとして初めてその全廃と根絶を目的として起草された「核兵器禁止条約」が国連本部で採択された。それに対して日本政府は、下記の2つの理由を挙げて、米国などの核兵器の保有国とともに本条約作りの動きに反対し、今後も署名することはないとの基本姿勢であった。

 その理由の第1は、わが国には核開発を続ける北朝鮮の差し迫った脅威があり、日本が同盟国米国の核の傘によって守られている以上、条約には賛成できないというものである。

 第2に、日本は、核軍縮は核保有国と非保有国が一緒になって段階的に進める必要があるとの立場をとっているが、本条約には米国やロシアなどの核保有国、それに米国の核の傘の下にある日本やドイツのようなNATO加盟国など、合わせて38か国が参加していない。

 その一方で、非保有国が参加する二分化対立の構図になっており、そのため、条約はできても具体的な結果を作り上げることはできないとの理由である。

 しかし、わが国は、唯一の戦争被爆国として核廃絶を国際世論に強く訴えることができる特別な存在であり、政府も「核兵器のない世界」を目指すことを日本の責務だと位置づけている。

 同時に、北朝鮮からの差し迫った核ミサイル脅威に対して米国の核の傘に入ることは国としての死活的な選択であり、同時に日本が自ら弾道ミサイル対処能力の更なる向上や敵基地攻撃能力の保有などによって核抑止力を強化することも、わが国の生存と安全を確保するうえで、不可欠である。

 つまり、核廃絶を「リード」する一方で、核の脅威を「ヘッジ」する「リード・バット・ヘッジ」政策を追求することは、わが国の基本方針として決して矛盾のない、賢明で、現実的な選択である。

 また唯一の戦争被爆国日本であればこそ世界に向かって発信できる実効性と説得力のある政策ではないだろうか。