原油市場に悪影響を与え続けるトランプ政権

米国の移民取り締まり強化、脱「中東依存」で何が起きるのか

2017.07.07(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50421
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 外貨準備の減少にも歯止めがかからない。2014年8月に7370億ドルに達した外貨準備は、原油安により発生した巨額の財政赤字を穴埋めするため、今年4月には5000億ドルを割ってしまった。昨年約700億ドルに上った財政赤字を今年約530億ドルにまで減少させる計画だが、頼みの原油価格が昨年の原油価格に接近しているため収入の見込みが大幅に減少する可能性が高い。

 加えて、6月21日の新皇太子任命に関連する施策で、サウジアラビアの労働者の3分の2を占める公務員の給料カットを遡って撤回しており、今年も外貨準備が大幅に減少するだろう。「減ったとはいえ、まだ4年分の輸入額に相当する外貨準備があるから大丈夫」との見方が一般的だが、残っている外貨準備のうち相当額が換金性の低い物件に投資されているとの観測がある。サウジアラビア通貨リヤル売りの圧力が再び高まることも否定できない。

 日本では報道されていないが、「ニューヨークタイムズ」(6月28日付)の記事は衝撃的だった。内容は、「皇太子を解任されたナイフ氏がジッダの宮殿に幽閉されている」というものだ(サウジアラビア政府は即座にこの記事を否定している)。

「国王~皇太子の親子での権力承継を、今回限りにする」ことを基本法を改正して定めるなど、ムハンマド皇太子の就任は円滑に進んだとされてきたが、ムハンマド皇太子が国王になるためには、なお強力な反対勢力(アブドラ前国王の息子たちなど)との戦いに勝利しなければならないようだ(6月29日付「ZeroHedge」)。

 新皇太子が副皇太子に着任した2015年4月の原油価格は1バレル=65ドル強だった。原油価格はその後一度もその水準に回復していない。

 新皇太子が目指すサウジアラムコの上場のためにも、自らが祝福されて国王になるためにも、原油価格の上昇が不可欠である。しかし、これが実現できるのは「サウジアラビア内での内戦勃発でしかない」(6月29日付「ZeroHedge」)のだとしたら、あまりに皮肉である。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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