イーロン・マスク(写真:REX/アフロ)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

リーダーシップは「始動力」

 4月は入学式や入社式のシーズンです。私はここ数年、この時期になると、各地でリーダーシップ研修の講師、リーダーシップ講演のスピーカーとして呼ばれることが多くなってきました。

 今年は客員教授にもなっている福井県立大学の入学式で、新入学生に向けてリーダーシップの講演をしてきました。神戸市でも新入職員全員向けにリーダーシップ研修を依頼されて実施してきました。こちらは3年連続の研修です。

 リーダーシップは日本語ではよく「指導力」と訳されます。したがって、もしかしたら、「なぜ大学の新入生や市役所の新規職員を対象にリーダーシップ研修が必要なのか」と不思議に思う人がいるかもしれません。リーダー=指導者と考えると、普通、この手の研修は大学生なら部活やゼミで上級生となってからで、社会人であれば部下を持つ立場になってから受けるものと思われています。

 実際、神戸市での研修の時、市職員になりたての人々に「市役所に入ったばかりなのに、リーダーシップ研修を受けることに違和感がある方」と尋ねたら、多くの人が手を上げました。

 実はそれは「リーダーシップ」という言葉の意味を誤解しているからです。私は日頃から「リーダーシップとは『指導力』ではなく、実は『始動力』だ」と言っています。翻訳がそもそも違うのです。

 その本質は、組織をまとめて引っ張っていく力ではなく、まっさきに自分から動いて新しいことに挑戦する力です。「始動力」ですから、新人だとかベテランだとか役職者だとか、あるいはそうじゃないかなどは関係ありません。どんな立場であってもある程度、時には激しく必要なのが始動力なのです。

 集団を率いるという意味で求められるのは、本来は「リーダーシップ」ではなく「マネジメント」。両者はどちらも「シドウリョク」かも知れませんが、本質的に全く違う概念なのです。