日本は「始動力」不足

 私にリーダーシップをテーマに講演や研修がいくつも舞い込んでくるのは、その組織のトップの人たちが、いまの日本に危機感を覚えていることの裏返しなのだと感じています。

 周囲の空気を読んで場を乱さず、掲げた共通の目標を、みんなで協調性をもちながら達成していこう、という行動様式を尊重しすぎてきた日本人は、順当にいい学校を卒業して良い会社に入り、マネジメントには長けていますが、創造性や独創性を抱きにくい人々になってしまいました。これが日本経済の苦境の原因にもなっていると私は思います。

 株価が上昇してきているので一見景気がいいような錯覚を覚えそうになりますが、去年、内閣府が公表した1人当たりGDPランキング(2022年、OECD加盟国)で日本はイタリアに抜かれ21位になりました。韓国がすぐ下に控えており、いつ追い抜かれても不思議ではない状況です。

 この原因は、一つには日本人が空気を読んで、突出することを避け、そこそこの成果を求めれば十分という発想に染まり過ぎた結果、かつてのソニーやホンダのような活力に満ちた独創的な企業が生まれなくなったからだと思うのです。

 皮肉なことに、そうした、社会の教育環境の「主流」とは別に、偏差値に追われずに、食の世界や、アニメその他の芸術の世界、あるいはスポーツとか美容の世界などに行った日本人たちは、クリエイティビティを発揮して世界的な競争力が高かったりします。