ホンダは創業者であり技術者の本田宗一郎を支える、藤沢武夫というマネジメントに長けた名参謀がいたからこそ、ユニークな製品で世界に名を轟かせるまでに成長しました。ソニーでは、天才井深大を卓越したマネジメント力で支えたのが盛田昭夫でした。その盛田昭夫は、リーダーシップも発揮し、ウォークマンの開発と発売が有名ですが、特にポスト井深の時期においては物凄い始動力を発揮しました。

ホンダの創業者・本田宗一郎氏。昭和29年撮影(写真:共同通信社)

 しかし最近の日本企業のトップはマネジメント系の人ばかりで、始動力が不足している人が目立ちます。自分のことを棚に上げて書けば、文系社員がうまくマネジメントして現状維持に汲々としています。だから革新が起こらないのです。

 リーダーシップを持つ人を日本全体で育てていかないと、停滞する社会を変革するような人物は出てきません。国としても社会としても静かに衰退していくことになります。

世界は始動力で満ちている

 世界を見渡してみてください。アメリカではトランプ前大統領が今年の大統領選で返り咲く可能性が取り沙汰されています。ロシアではプーチン大統領が再選されました。

 彼らが発揮しているのがいいリーダーシップか悪いリーダーシップかは意見が分かれるところですが(少なくとも私は好きなリーダーではない)、世界を揺るがす始動力を持っているのは間違いありません。そうした人達と対峙できないと、逆の意味での始動力(彼らの始動力を押さえて別の社会を作る始動力)を発揮することは無理です。

 翻って日本の岸田文雄首相はどうでしょうか。率直に言えば、リーダーシップを大いに発揮するタイプには見えません。社会を変革するというより、目の前に現れる課題を粛々とさばくのが得意なタイプではないでしょうか。

 そして、自民党内や官邸の現状を見ているとどうもマネジメント力が特に秀でているようにも見えません(チームをうまくまとめている感じも受けません)。そういう意味では、日本の先行きは、少なくとも政治面では、はなはだ心配です。

 もちろん始動力が必要なのは政治家や経営者だけではありません。多くの人が自ら動き出す力を持つことが、社会の変革や国の発展につながります。私もそのことを痛感しているからこそ、主宰する青山社中で毎年リーダー塾を開催しています。今年も間もなく(6月1日から)14期が開講します。真のリーダーシップを身に着けたいという方はぜひ青山社中のホームページを参照してください。

【朝比奈一郎(あさひないちろう)】
青山社中筆頭代表・CEO。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。東京大学法学部卒業後、経済産業省に入省。ハーバード大学行政大学院修了。経産省ではエネルギー政策やインフラ輸出などを担当。また霞が関の構造改革を目指す「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」を設立し、初代代表に就任、霞が関改革案を提言する。2010年11月、日本再生を目指す青山社中株式会社を設立、教育・リーダー育成、政策支援・シンクタンク、自治体向けのコンサルティング等を手掛ける。

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