原油市場に悪影響を与え続けるトランプ政権

米国の移民取り締まり強化、脱「中東依存」で何が起きるのか

2017.07.07(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50421
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 エネルギー版の「アメリカ・ファースト」である。だが、果たしてそれは可能だろうか。

 シェールオイルをはじめとする米国の原油輸出量は、2015年1月の輸出解禁以降、着実に増加し、日量60万バレルの水準に達している。この規模はサウジアラビアの輸出量(日量約700万バレル)には遠く及ばないが、OPEC加盟国のリビアやアルジェリアなどの輸出量を超えている。輸出先についても、輸出解禁以前は例外扱いだったカナダへの輸出が9割以上を占めていたが、カナダのシェアは6割以下に低下し、多様化が進んでいる。

 一方、輸入だが、国内の原油生産が急激に増加したとはいえ、輸入量は日量約800万バレルであり、そのうちOPEC加盟国からは同約300万バレル輸入している。米国だけで限ってみれば、原油の「完全自給」にはほど遠い状況である。

 とはいえ、南北米州大陸まで範囲を拡大すれば、カナダ(オイルサンド)やブラジル(深海油田)の増産が見込まれていることから、「原油の完全自給はいずれ達成できる」との楽観論が高まっていることは間違いないだろう。

移民の取り締まり強化でガソリン需要が低迷

 米国の「エネルギー覇権」確立にはシェールオイルの増産が不可欠である。だが、ここに来て「大きな落とし穴」があったことが明らかになっている。

 それは、「トランプ政権が移民の取り締まりを強化していることで、不法移民が車の運転を控えガソリン需要が伸び悩んでいる」というものである(6月22日付「ブルームバーグ」)。

 シェールオイルが今後とも順調に増産するためには、1バレル=50ドルの原油価格が必要である。原油価格がその水準まで上昇するためには、ガソリン需要の増加が不可欠となる。しかし、ドライブシーズンに入ってもなかなかガソリン需要が伸びてこない。

 トランプ大統領が就任した1月以降、地方の警察が必要な証明書類を持たない移民を見つけ、国外退去処分とするケースが増加している。それに伴い、取り締まりを回避するために自動車を利用しない移民が増えていると言われている。その最たる証拠は、トランプ大統領が就任した週のガソリン需要が前年比5%近く落ちていることである。英バークレイズは「この理由(移民の取り締まり強化)だけで1月~4月のガソリン需要は最大0.8%減少した」と推計している。ドライブシーズンに入り、今後ますますその傾向が鮮明になっていくのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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