原油市場に「暴落」の兆し、防ぐ手段はあるのか

地政学リスク上昇も「後の祭り」か

2017.06.23(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50313
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 イランの影響力を削ぐことを目的としたサウジアラビアの突然の行動は、国際的な理解をほとんど得られなかった。むしろ、カタールがイランに接近したことで、結果的にイランの影響力が拡大させる結果となっている。

 6月21日、サウジアラビアのムハンマド副皇太子が皇太子に昇格し名実ともに権力基盤を確立したが、原油価格下落による国内の不満をそらすためにイランとの対立をエスカレートさせるのは時間の問題であろう。これにより中東地域全体で地政学リスクが上昇し、原油価格を押し上げる可能性があるというわけだ。

 しかし筆者は、イラン・イラク戦争の前例から地政学リスクは万能ではないと考えている。

 イラン・イラク戦争は当時のOPEC生産量第2位と第3位のイラクの間で紛争が生じたため、両国合わせて日量560万バレルの原油供給が削減された(当時の世界の原油供給の8.6%)。ペルシャ湾では400隻以上のタンカーが攻撃され、300名以上の乗組員が命を落とすなど両国の間でタンカー攻撃が相次いだが、逆オイルショックで急落した原油価格は高騰することなく、2004年頃まで1バレル=20ドル前後で推移した。

 デスクロスが現れた原油市場で原油価格が再暴落すれば、オイルマネーの劇的な縮小により世界の金融市場が変調をきたすのは間違いない。そうなれば地政学リスクが上昇しても「後の祭り」で、原油価格は高騰しないのではないだろうか。

 2016年2月に1バレル=26ドルの安値を付けて以降、原油価格は主要産油国の「減産」期待だけで回復してきた。だが、シェール革命により世界の原油市場のファンダメンタルズが「不足」から「過剰」に転じた現在、価格を再び上昇させる「特効薬」はもはや残っていないのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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