米国のシリア攻撃が原油価格に与えた影響とは

地政学的リスクの高まりで減産延長に暗雲

2017.04.14(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49711
  • 著者プロフィール&コラム概要

ロシア、米国のシリア攻撃を非難 米ロ関係に「相当なダメージ」

米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。米海軍提供(2017年4月7日撮影・公開)。(c)AFP/US NAVY/Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams〔AFPBB News

 4月10日の米WTI原油先物価格は1バレル=53ドル台に上昇した(その後、サウジアラビアの減産延長の意向が伝えられ、米国の原油在庫の減少が明らかになったが、シェールオイルの増産を嫌気して、原油価格は1バレル=52ドル台に下落した)。

 上昇の要因となった国はリビアだ。4月9日、リビア最大のシャララ油田が武装勢力に封鎖されたため生産が再び停止し、輸出港ザウィアからの原油輸出が不可能になったことを受けて、国営石油会社が「フォースマジュール」(不可抗力条項の適用)を宣言したことが価格を押し上げた。フォースマジュールは先月27日に続き今年2回目であり、リビアの原油生産量は再び日量約20万バレル減少したとされている。

 先週、米国がシリアの軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことから「地政学的リスク」が意識され始めたことに加え、ドライブシーズンを控えて米国の製油所の稼働率が上昇しているなど、原油価格が上昇しやすい地合いとなりつつある。3月のWTI原油の平均価格は昨年11月以来の1バレル=50ドル割れとなったが、4月に入り「再び元のボックス圏(同50~55ドル)に戻った」との声も出始めている。

 とはいえ、リビアの供給減は世界の原油供給量(日量約9600万バレル)からすればわずかな量に過ぎない。米国で石油製品の需要が増加したとしても、シェールオイルの増産が続いていることから、原油在庫の減少が続くかどうかは不透明な状況だ。

サウジとロシアの溝が鮮明に

 現在、原油価格を下支えしているのはなんと言っても主要産油国の協調減産である。だが筆者は、米軍によるシリアへのミサイル攻撃が主要産油国間の協調関係に暗い影を投げかけたのではないかと危惧している。

 サウジアラビア政府は4月7日、米軍がシリアの軍事拠点を攻撃したことについて、「トランプ大統領による勇気ある決断である」と全面的な支持を表明した。一方、ロシアのプーチン大統領は「米国のシリア攻撃は侵略」だとして厳しく批判した。シリア情勢を巡って“反体制派を支援するサウジアラビア”と“アサド政権を支えるロシア”との間で溝が生じていたが、米軍の攻撃によりこの構図が一気に鮮明になってしまった感が強い。

1
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ