米国のシリア攻撃が原油価格に与えた影響とは

地政学的リスクの高まりで減産延長に暗雲

2017.04.14(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49711
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 国営石油会社「PDVSA」の4月の債務返済額は25億ドルである(国全体の返済額は約30億ドルと言われている)。ベネズエラは「融資を受けてその返済を原油で行う」契約を中国などとの間で結んでいるため、生産される原油量の4分の1以上が融資の返済分に回り、原油売却代金が徴収できなくなっている。外貨準備高は10億ドルにまで落ち込んでおり、デフォルトを防ぐためには原油を増産することがあっても減産することはありえないだろう。

 このように地政学的リスクの高まりは、主要産油国の減産体制の維持・延長にとって大きなマイナスである。

 地政学的リスクなどで原油価格が復帰したことにより、米国における石油掘削装置(リグ)の稼働数は毎週2桁のペースで増加している。「フラックログ」(掘削したものの生産を開始していない油井)からも日量30万バレル分の原油が供給される見通しが高まっている(3月29日付OILPRICE)。

台頭する「第3勢力」

 2014年後半以降、世界の原油市場は“OPECを始めとする主要産油国”対“シェール企業”という構図となっているが、ここに来て「第3勢力」がさらに加わるという事態が現実味を帯び始めている。

 国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は3月末、「協調減産により原油価格が上昇すれば、米国産にとどまらずブラジル産やカナダ産の原油が市場に流入するだろう」と述べた。ブラジル産の今年の増産分は日量23万バレル(海底油田開発)、カナダ産は日量15万バレル(オイルサンド)とされている。

 前回のコラム(「いよいよ切れた『減産ゲーム』の神通力」)でブラジル沖の「プレソルト」(原油を含むことができる炭酸塩から成る多孔質の岩石)の海底油田開発の状況を紹介したが、ブラジルの2月の原油生産量は前年比15%増の日量268万バレルとなり、輸出量は前年比94%増となった。

 ブラジル政府は近年プレソルトの鉱区を海外大手企業に開放しており、英蘭シェルなどが既に活動を開始している。4月に入ってからは、エクソンモービルが当該地区に本格的に参入する意向を示した。これにより、ブラジル政府が「2020年の原油生産量を日量400万バレルとする」目標の実現性が高まっている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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