米国のシリア攻撃が原油価格に与えた影響とは

地政学的リスクの高まりで減産延長に暗雲

2017.04.14(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49711
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 サウジアラビアは従来欧州市場への関心が低かった(2016年のサウジアラビアのシェアは8%)。しかし、成長著しいアジア市場での競争激化やシェール革命による米国での原油需要の減少により欧州市場に注目し始めており、既に欧州市場へダンピング価格で原油輸出を始めていると言われている。

 日本ではあまり知られていない欧州市場でのロシアとサウジアラビアの間のシェア争いに安全保障上の問題が加われば、ロシアとサウジアラビア間の歴史的な協調関係が瓦解する可能性がある(昨年4月のドーハ会合の失敗はサウジアラビアとイランの間の安全保障上の緊張の高まりが原因だった)。

OPECが抱える地政学的リスク

 OPEC内でも、米軍のシリア攻撃で協調減産に関する不協和音が高まっている。

 まず、イラク政府は「年内に原油生産能力を現在の日量440万バレルから同500万バレルにまで引き上げるプロジェクトを進めている」ことを明らかにした。イラク政府はIS(イスラム国)との戦闘で軍事費が増大し財政危機に陥っているが、米軍のシリア攻撃後ISが反転攻勢に出ていることから、軍事費がますます嵩む状況になっている。財政危機を忌避するため、イラク政府は年後半増産することはあっても減産を延長することは考えにくい。

 また、減産実施後の期間で原油生産量が日量約380万バレルにまで増加したイランも、米軍の攻撃後のシリアにおけるアサド政権支援のため、年後半に減産を受け入れる余地はなくなりつつある。

 OPEC内にはもう1つの「地政学的リスク」がある。ベネズエラの政情不安だ。

 ベネズエラは減産合意に基づき原油生産量を日量207万バレルから同197万バレルに減少することになっているが、原油収入に依存する財政構造が破綻しかかっている状況では減産を実施できるわけがない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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