原油市場に「暴落」の兆し、防ぐ手段はあるのか

地政学リスク上昇も「後の祭り」か

2017.06.23(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50313
  • 著者プロフィール&コラム概要

 米国では、6月に入りガソリン在庫に異変が生じている。ドライブシーズンが始まっているにもかかわらず、ガソリン在庫が2週連続で増加しているのだ。ガソリン在庫は2億4200万バレルに達し、過去5年平均と比べてかなり高い水準にある。5月末まで拡大していたガソリン需要が6月に入ってから伸び悩むのは、2001年以来の現象である。

 米国のガソリン需要が変調をきたしているのは、サブプライム自動車ローンの焦げ付き増加で新車販売が低調であることに加え、実質賃金が伸びない中で米国の消費を支えてきた消費者ローンの「蛇口」を金融機関が締め始めているからだろう(家計の債務残高がリーマンショック前のピークを上回っている)。トランプ政権の取締り強化で運転を控える不法移民が増加しているのがその要因であるとの観測もある(6月21日付ZeroHedge)。

シェールも在来型も在庫拡大の可能性

 原油在庫の高止まり傾向は、今後も続くのだろうか。

 米国の原油在庫を地区別に見てみると、2014年以降、急激に増加したのはメキシコ湾岸(1.7億→2.8億バレル)と中西部(0.8→1.6億バレル)である。

 メキシコ湾岸の在庫が増加した理由は、同地区の原油(シェールオイル)生産が増加したためである。

 メキシコ湾岸の原油生産量は日量約600万バレルと米国全体の約6割を占めるが、その内訳はパーミアン鉱区などのシェールオイル(約60%)、メキシコ湾の在来型(約30%)。WTI原油(在来型、約10%)である。

 シェールオイルは1バレル=50ドルで収支のバランスをとっており(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、原油価格が40ドルに下落すればシェール企業のリグ稼働数の伸びが止まる可能性が指摘されている(6月14日付ブルームバーグ)。

 しかし増産はなかなか止まらないだろう。リグ稼働数の増加と生産量の増加の間には半年程度のラグがあるため、今後半年間は増勢が続くからである。

2
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ