原油市場に「暴落」の兆し、防ぐ手段はあるのか

地政学リスク上昇も「後の祭り」か

2017.06.23(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50313
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 さらに、「待機井戸(DuC)」の存在がある。DuCとは地面深く掘ったもののフラッキングを行っていない未完成の油井のことを指し、その数は米国全体で約5500基と増大している(日量約40万バレルの生産能力を有する)。

 DuCに関する井戸掘削費は既に経費として処理されており、シェール企業がDuCを完成させる費用は1バレル当たり約20ドルと格安である(フラッキング関連費用のみ)。直近1年間にシェール企業の増産を支えた主な資金調達手段はジャンク債の発行とプライベートエクイティからの投資である(6月19日付ZeroHedge)が、新たな資金提供者は短期での利益追求の傾向が強いため、原油価格が1バレル=30ドル割れし赤字操業の状態になっても、ぎりぎりまで生産を続けるのではないだろうか。

 増産を続けるのはシェールオイルだけではない。メキシコ湾の在来型原油も、シェールオイル採掘技術であるフラッキング技術の導入でコストダウンが見込まれ、今後増産される可能性が高い。メキシコ湾岸の原油在庫は、今後減少するどころか増加する可能性すらあるのだ。

 一方、中西部の原油在庫が増加している要因は、カナダからの輸入増である。輸入量は2014年の日量約200万バレルから約300万バレルに拡大している。最近の原油安で停滞していたオイルサンドの生産がコストダウンに成功したことにより、今後3年間の生産量が急増するとの見通しが出ている。これにより中西部の原油在庫は再び増勢に転じる可能性がある。

 サウジアラビアは米国の原油在庫を減少させるため、7月の米国への輸出量を過去30年で最低の水準にする(通常の水準に比べ日量30万バレル減の約85万バレル)ことを決定した。しかしイラクが米国の輸出を増加させており(6月は日量110万バレル)、サウジアラビアの懸命の努力が徒労に終わる懸念が生じている。

市場関係者のセンチメントは悪化の一途

 以上のとおり米国の原油在庫がなかなか減少しない中、6月半ばからファンドの「売り」が目立ち始めるなど市場関係者のセンチメントは悪化するばかりである。

 2014年の原油価格下落を的確に予測した専門家は、「OPECは在庫を減らすために、減産幅を90日間に限ってさらに日量100万バレル拡大すべきだった。主要産油国は千載一遇のチャンスを逃した」として、原油価格の上昇はありえないとの口ぶりである(6月16日付ブルームバーグ)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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