いよいよ切れた「減産ゲーム」の神通力

減産延長の動きに市場は無反応、原油価格は大幅下落の恐れ

2017.03.31(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49577
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 米国内の供給増で原油需給が緩んだ状況が続くとの警戒感が強まる中で、市場関係者は「産油国の口先介入に市場はうんざりしている」「減産合意の延長は今回の会合で提言されるに至らず、危うい状態にあるのは明らかだ」として、産油国の減産延長の動きを材料視しなかった(3月27日付ブルームバーグ)。このことは、昨年3月以来の「産油国が協調減産を行う」ことを材料に原油価格が上昇してきた、いわば「減産ゲーム」の神通力がついに失われてしまったことを意味するのではないだろうか。

 その後リビアで原油生産に障害が生じているとの報道をきっかけに原油価格は1バレル=49ドル台に上昇した(産油国内の治安悪化による突然の生産途絶が原油価格の上昇要因になるとの構図が昨年4月以来続いている)。

ブラジルが「プレソルト」開発で原油増産

 このような状況の下で筆者が注目するのは、ゴールドマンサックスが3月21日に発表した世界の原油供給に関する調査レポートである。

 ゴールドマンサックスはレポートで「今後2~3年間は世界の原油市場は過剰供給状態に陥る恐れがある」と見通す。その理由としては、「原油価格が高値で推移していた2011~2013年の設備投資の効果が表れ、2017年から2019年にかけて巨大プロジェクトの生産の伸びが過去最大となる公算が大きい(原油生産量は日量100万バレル増加)」ことを挙げている。

 ゴールドマンサックスは、巨大プロジェクトが実施されている地域としてブラジル、ロシア、カナダ、メキシコ湾を挙げている。今回の協調減産に参加していないブラジルで開発が進められている海底油田の現況について紹介しよう。

 海底油田の開発は当初はごく浅い海域に限定されていたが、近年では深いところでも行われるようになってきている。300メートルより浅い海が浅海、300メートル以深が大水深、1500メートル以深が超大水深と呼ばれているが、大水深・超大水深の油田の中で最も埋蔵量が期待されているのが「プレソルト」である。プレソルトとは「原油を含むことができる炭酸塩から成る多孔質の岩石」のことを指し、陸上にも海底にも存在する。技術革新により、海底に存在するプレソルトの開発が可能となった。

 海底のプレソルトの開発に世界で最も成功しているのがブラジル沖である。

 ブラジル国有石油会社であるペトロブラスによれば、プレソルトからの原油生産量は2014年日量14万バレルだったが、2017年に同120万バレル、2020年に同210万バレルと大幅に増産した。同社は、「プレソルトの原油生産は原油価格が1バレル=40ドルなら採算可能である」としている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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