いよいよ切れた「減産ゲーム」の神通力

減産延長の動きに市場は無反応、原油価格は大幅下落の恐れ

2017.03.31(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49577
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 これにより米国での原油生産の伸びは鈍化するだろうが、ジャンク債市場をはじめとする金融市場の動揺が世界の原油需要に与える悪影響は無視できない。

米国で高まる反サウジアラビア感情

 最後にサウジアラビアの状況はどうか。

 2月25日から3月18日までサルマン国王がアジアを歴訪した。その目的は、マレーシアやインドネシアで投資を行い、その見返りとして、イランに対抗するサウジアラビアへの支持をイスラム諸国から取り付けることにあったとされている。

 サウジアラビアは「ビジョン2030」を掲げ、脱石油依存型経済を目指している。だが、各国と合意した主な案件は皮肉にも石油部門ばかりだ。経済改革の難しさが改めて浮き彫りになった形である。

 同時期に、ムハンマド副皇太子が米国を訪問し、イラン核合意で冷却した両国関係の改善を目指した。しかし米国側の反応は冷ややかだったようである。逆に、米同時多発テロの犠牲者の遺族達(800人以上)がアルカイダを支援していたとして、3月20日にサウジアラビア政府を提訴した(賠償金の要求額は未定)。21日には米ハフィントンポストが「サウジアラビア政府は世界でテロを支援している」との批判記事を掲載するなど、米国内で反サウジアラビア感情が高まりを見せており、「ビジョン2030」の目玉であるサウジアラムコの米国での株式公開が危ぶまれる事態になっている。

 以前から指摘しているとおり、サウジアラビア政府が最優先すべきは「原油価格の安定」である。

 サウジアラビア政府が協調減産の延長のために、「原油生産を増加させているイランが減産に参加すべきである」との主張を持ち出すとの懸念が出ている(3月22日付Platts)。しかし、その主張にこだわれば昨年4月のドーハ合意失敗の二の舞になり、協調減産自体が空中分解するおそれがある。

 原油価格の大幅下落を防ぐためには、主要産油国に加え欧米石油メジャーの協調が不可欠である。だが、その可能性は低いと言わざるを得ない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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